多くの業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が進んでいますが、住宅業界も例外ではありません。経済産業省のDX推進ガイドラインでは、DXを以下のとおり定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0|経済産業省
住宅業界では、書類などアナログな手段を使うことが多く、これまで決してDX推進が進んでいたとは言えませんでした。ただ、昨今の社会情勢を鑑みると、これからは住宅業界においてもDX促進は必須になるでしょう。本記事では、住宅業界においてDXを導入するメリットや、DX推進を成功させるポイントを解説した後、住宅メーカーにおけるDX活用事例を紹介します。
目次
住宅業界においてDXを導入するメリット
ここでは、住宅業界においてDXを導入するメリットとして、以下の5つを解説します。
- 業務の効率化
- 労働条件の改善
- 顧客満足度の向上
- 人材不足の解決
- ナレッジ共有の促進
それでは、1つずつ解説します。
業務の効率化
住宅業界がDXを導入するメリットの1つ目は、業務の効率化です。DXにより業務の効率化を実現する方法には、例えば以下があります。
- 書類のペーパーレス化
- 顧客との打ち合わせ時間の調整を自動化
- 社内wikiを用いたマニュアルの共有
- 営業や事務作業でのツールの活用
特に、今までデジタル化が進んでいなかった会社ほど、うまくDXを推進できれば、大きな業務の効率化を実現できるでしょう。
関連記事:営業事務の効率化のための4ステップ!実行方法やメリット・対象業務も解説
労働条件の改善
住宅業界がDXを導入するメリットの2つ目は、労働条件の改善です。これまでの住宅業界は、多忙で人員不足になりがちでした。しかしDXを活用すると、以下のように労働環境の改善が期待できます。
- 工数管理ツールを用いた、より効率的な業務遂行で労働時間の短縮
- 定型業務を自動化ツールに移行し、人にしかできない業務への集中で社員のやる気増大
- ナレッジ共有を促進し、社員教育にもナレッジを活用
関連記事:【2024年版】工数管理ツールおすすめ10選を徹底比較!メリットや注意点も詳しく解説
顧客満足度の向上
住宅業界がDXを導入するメリットの3つ目は、顧客満足度の向上です。例えばDXの活用で、新規サービスをより迅速に立ち上げられることが期待できます。これまでのサービスを運用し続けるよりも、新規サービスを積極的に始める方が顧客満足度を向上させ、新規顧客の獲得にもつながります。また、ビッグデータ分析やAIを活用すれば、顧客のニーズを分析してより最適な形でアプローチできることも、顧客満足度を高めることにつながります。
関連記事:DX推進の背景・課題と失敗しないための5つポイント
人材不足の解決
住宅業界がDXを導入するメリットの4つ目は、人材不足の解決です。住宅業界においても、少子高齢化などで人材不足を課題と感じている会社は少なくありません。しかし、DXで人材不足の課題も解消できるかもしれません。例えば、AIを活用した現場管理システムを作ることで、工事管理や現場監督などの業務を効率化する取り組みがなされています。これが成功すれば、人手が少なくとも今まで以上の業務を行える可能性があるでしょう。
ナレッジ共有の促進
住宅業界がDXを導入するメリットの5つ目は、ナレッジ共有の促進です。これまでは、社員の異動や退職で引き継ぎ業務が発生すると、多くの時間や手間が取られていました。また、住宅業界には属人化しやすい業務も多いため、特定の社員が不在になった際に業務効率が低下する恐れもありました。属人化とは、「特定の業務のやり方や進捗状況が、特定の人物しかわからくなっている状態」のことです。しかし、ナレッジ共有を促進することで、引き継ぎ業務を効率化したり、業務の属人化を防止したりすることが図れます。DXを活用すれば、顧客情報や打ち合わせ内容などを、より簡単に共有することもできるでしょう。
関連記事:ナレッジ共有が社内DXの鍵!?概要から実現のポイントやツールの種類まで解説
住宅メーカーがDX推進を成功させるポイント
ここでは、住宅メーカーがDX推進を成功させるポイントとして、以下の3つを解説します。
- まずはスモールスタートで始める
- 自社の実情に合わせて最適な方法を模索し続ける
- 属人化防止の仕組みを作る
それでは、1つずつ解説します。
まずはスモールスタートで始める
ポイントの1つ目は、まずはスモールスタートで始めることです。どんなにDX導入に向けて準備をしても、組織全体で一気にDX導入をスタートすることは現実的ではありません。多大な労力がかかる上に、混乱を招くリスクも大きいでしょう。そのため、まずはスモールスタートで始めることで、無理なくDXの導入成功への足掛かりを作ります。例えば、ペーパーレス化を進めるのであれば、まずは一部の帳簿のみペーパーレス化を推進しましょう。また、ある程度の規模の住宅メーカーであれば、一部の部署にのみ新たなDXツールを導入し、評判がよければ他部署にも導入していくという方法も有効です。
出典:DX 推進計画策定ガイドライン|一般社団法人 住宅生産団体連合会
自社の実情に合わせて最適な方法を模索し続ける
ポイントの2つ目は、自社の実情に合わせて最適な方法を模索し続けることです。DX推進に完成形と呼べるものはありません。現状に満足することなく改善し続け、自社にあった状態を作り続ける姿勢が大切です。また、DXツールを導入する際には、何もかもをDXツールベンダーに丸投げすることは賢明ではありません。これは、DXツールベンダーは、住宅業界やその業務を十分理解しているとは限らず、自社の実情に合わない提案をすることも考えられるからです。導入時に他者の事例を参考にすることも大切ですが、最適なDX推進方法は会社によって異なるため、自社なりの方法を模索していくことが重要です。
関連記事:企業の生産性向上について徹底解説!定義やメリット・実現のための方法まで解説
属人化防止の仕組みを作る
ポイントの3つ目は、属人化防止の仕組みを作ることです。属人化が発生すると、その業務を行える人が休暇や退職などで不在になると、業務の品質低下が発生しかねません。場合によっては、業務自体が不可能になります。しかし、DXによりナレッジ共有を促進し、誰でも業務を実施できるマニュアルを整備して共有するなどを行えば、属人化を防止できます。これにより、特定の社員がいなくても一定以上の業務が可能になり、業務品質を安定させられるでしょう。
関連記事:業務改善を成功させるためのマニュアル作成・おすすめツールを徹底解説
住宅メーカーにおけるDX活用事例
ここでは、住宅メーカーにおけるDX活用事例として、以下の2つを解説します。
- 事例1
- 事例2
それでは、1つずつ解説します。
事例1
事例の1つ目は、関東の住宅メーカーにおける事例です。こちらの住宅メーカーでは、営業活動においてDXを推進しています。例えば、ボタン1つで土地や物件の情報を表示できるMAツールを導入しました。これにより、顧客に案内する物件の情報収集や資料印刷にかかっていた時間や手間を削減し、業務効率化に成功しました。また、デジタル資料は画面共有すれば簡単に見せることができるため、営業活動でオンライン商談に臨む際にもプラスとなっています。
関連記事:建設DXが建設業界を変える!?解決が期待できる課題や活用事例などを解説
事例2
事例の2つ目は、九州の住宅メーカーにおける事例です。こちらの住宅メーカーでは、DX推進に際して、以下の2つの方針を打ち立てました。
- 従業員の生産性向上により、働き方改革を実現
- プラットフォーム構築で新たなビジネスモデルを創出し、ライフスタイルやライフワークの変化に適応
また、独自にDXビジョンを掲げ、作業時間削減やWeb集客数などに関する数値目標を設定することで、より一層のDX化を推進しています。
関連記事:不動産業界のDXを徹底解説!取り組みが必要な理由と阻む要因・メリットと成功のポイントを紹介
まとめ
本記事では、住宅業界においてDXを導入するメリットや、DX推進を成功させるポイントを解説した後、住宅メーカーにおけるDX活用事例を紹介しました。昨今の社会情勢の変化により、DX推進は多くの会社で必要となってきました。それは、住宅業界も例外ではありません。DX推進に成功すれば、業務効率化や顧客満足度向上だけでなく、労働条件の改善や人材不足解決も実現が可能です。このことは、健全な形で長く会社を残すことにもつながります。
また、DX推進を成功させるには、スモールスタートで始めて、自社に最適な方法を模索し続けることが大切です。他社の活用事例を参考にしつつ、あなたの会社でもDXを導入して業務改善などに役立ててみてください。
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