土木業界におけるDX推進とは?具体的な活用シーンや技術・導入事例を解説

2024年10月17日(木) DX

土木業界は、人手不足や安全性確保の困難性など多くの課題を抱えています。それらの解決策として注目されているのが、DXです。ゼネコンや行政機関などでは、すでに多くのDX活用事例が見られています。しかし、DXの意味を十分に理解できていない方も少なくないかもしれません。DXが効果を発揮するシーンや活用事例を理解すれば、土木業界においてどのようにDXを活用すればよいか、具体的なイメージがもてるでしょう。

本記事では、DXの基礎知識やDX技術を解説した後、DXの導入事例を2つ紹介します。

関連記事:建設DXが建設業界を変える!?解決が期待できる課題や活用事例などを解説

土木業界でもDX推進が期待されている

ここでは、土木業界でも推進が期待されているDXの基礎知識として、以下の3つを解説します。

  • DXの意味
  • 2025年の崖
  • Society5.0

それでは、1つずつ解説します。

関連記事:デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?課題や進め方をわかりやすく解説

DXの意味

基礎知識の1つ目は、DXの意味です。

DX(Digital Transformation)とは、「デジタル技術を活用することで、社会やビジネスが変容する」ことを意味します。日本のビジネス界では、DXの定義として、経済産業省の「DX推進ガイドライン」で記されている定義を活用することが多いようです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0|経済産業省
関連記事:DX推進の背景・課題と失敗しないための5つポイント

2025年の崖

基礎知識の2つ目は、2025年の崖です。

2025年の崖は、2018年に経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」がまとめた報告書です。そこでは、日本企業がこのままDXを推進できなければ、2025年以降、最大12兆円以上の経済損失が発生すると試算しています。その要因は、主に以下の2つです。

  • 複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムでは、DXを十分実現できない
  • ITシステム保守・運用の担い手不足で、技術的負債を抱えるだけでなく技術の継承も困難に

出典:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|経済産業省

Society5.0

基礎知識の3つ目は、Society5.0です。

Society 5.0は、2016年1月に閣議決定され提唱された、新しい社会のあり方です。内閣府ホームページでは、以下のとおり解説しています。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

テクノロジーで仮想空間と現実空間をつなぎ、社会の諸問題を解決することで、より人々が暮らしやすい社会を目指しているのです。

出典:Society 5.0|内閣府

土木業界においてDXが効果を発揮するシーン

ここでは、土木業界においてDXが効果を発揮するシーンとして、以下の3つを解説します。

  • 作業効率・安全性向上
  • ノウハウ継承
  • 内業の効率化

それでは、1つずつ解説します。

作業効率・安全性向上

DXが効果を発揮するシーンの1つ目は、作業効率・安全性向上です。

例えば、工数管理ツールを用いることで、タスクやプロジェクトの全体像や進捗状況を見える化し、効率よく施工しやすくなるでしょう。また、情報共有ツールを用いてクラウド上で簡単に資料にアクセスできれば、作業効率向上が期待できます。さらに、後述のIoTを用いれば、建設機械の遠隔操作などが可能になり、工事現場の安全性向上につながるでしょう。

関連記事:【2024年版】工数管理ツールおすすめ10選を徹底比較!メリットや注意点も詳しく解説

ノウハウ継承

DXが効果を発揮するシーンの2つ目は、ノウハウ継承です。

土木業界においても、従事者の高齢化が大きな課題とされています。そのため、若手社員へのノウハウ継承に課題感を抱いている組織は珍しくありません。しかし、後述のCIMを用いることで3Dデータを活用し、直感的に理解しやすい形で、ナレッジの共有が容易になります。ナレッジ共有ツールを効果的に使用すれば、ナレッジの属人化を防止して、ノウハウ継承に役立つでしょう。

関連記事:社内のナレッジ共有はどう進める?何をどのように共有すべきか解説

内業の効率化

DXが効果を発揮するシーンの3つ目は、内業の効率化です。

土木業界においてDXが効果を発揮するシーンは、工事現場だけではありません。内業においても効果を発揮します。例えば、CMRやSFAなどを用いることで、営業活動の効率アップが期待できます。また、土木業界では工事書類などの書類上でのやりとりが数多く発生するものです。しかし、RPAや情報共有ツールを活用することで、これらの作業の効率性も高められるでしょう。

関連記事:営業の業務効率化を進める3つの視点とおすすめツールを解説

土木で活用されるDXの技術

ここでは、土木で活用されるDXの技術として、以下の3つを解説します。

  • クラウド
  • IoT
  • 5G

それでは、1つずつ解説します。

クラウド

土木で活用されるDXの技術の1つ目は、クラウドです。

クラウドを用いることで、遠隔地でも容易に情報共有が可能になります。海外の工事現場であっても、クラウドの活用は大いに期待できます。また、クラウドの管理や保守点検はベンダーが行う上、自社でサーバーをもつ必要もないので、コスト削減効果も期待できます。

関連記事:情報共有はクラウド化が必須!メリット・デメリットや導入例を全解説

IoT

土木で活用されるDXの技術の2つ目は、IoTです。

IoT(モノのインターネット)では、建設機械やスマートフォンなど、あらゆるものをインターネットに接続します。これにより、自動認識や遠隔操作を促進できるでしょう。土木業界では、建設機械の遠隔操作などに活用可能です。

5G

土木で活用されるDXの技術の3つ目は、5Gです。

5G(第5世代移動通信システム)は次世代の通信規格で、従来の4Gよりも「高速」「遅延が少ない」「同時に大量の接続が可能」であることが特徴です。5Gにより、生産ラインやレイアウトの最適化が期待されます。また、機械が代行できる仕事が増え、人間にしかできない仕事に一層集中することにより業務効率化を進めることが期待できます。

土木業界においてDXを活用している事例

ここでは、土木業界においてDXを活用している事例として、以下の2つを解説します。

  • ゼネコン
  • 行政機関

それでは、1つずつ解説します。

ゼネコン

DXを活用している事例の1つ目は、ゼネコンにおける事例です。

こちらのゼネコンは、経済産業省のDX認定事業者として認定されている上に、国土交通省からも表彰されています。ここでは携帯電話キャリアと提携し、5Gを用いて遠隔操作や自動操作が可能な建設機械の活用を目指しています。また、工事現場の温度や二酸化炭素濃度をリアルタイム計測して、危険な値が観測された場合は作業員にアラートを送る仕組みを検証中です。これにより、作業員の安全確保を目指します。

出典:DX推進ポータル|経済産業省

行政機関

DXを活用している事例の2つ目は、行政機関における事例です。

こちらの行政機関では、3DのCIMデータにより、遠隔地でも仮想現実を活用して工事設計に関する説明が可能になりました。これにより、工事設計に関する打合せを行う際に対面でなくともわかりやすく説明できるようになりました。このことは、打合せに伴う移動時間を短縮することにもつながっています。また、マルチデバイス化することで、一度に多くのメンバーが打合せに参加できることもメリットだといえます。

CIM(Construction Information Modeling/Management)
2012年に国交省から提言された、3Dモデルで関係者間の情報共有を行い、建設業務の効率化・高度化を図る取り組み。「ライフサイクル全体を見渡した情報マネジメント」と「3Dモデルを活用した情報の見える化」の両立を図る。

出典:国土交通省におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の 推進について|国土交通省

まとめ

本記事では、DXの基礎知識やDX技術を解説した後、DXの導入事例を紹介しました。土木業界の課題解決に対し、DXは大いに効果を発揮する可能性があります。一方で、新しいDX技術の導入そのものを目的にしていては、現場の実情や社員のITリテラシーに合わない技術を組み込んでしまう可能性があります。DXの意味や活用シーン、技術を十分に理解することも、DXの導入成功に必要です。DX推進を成功させたい場合は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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