食品業界をDXが変える!?基礎知識から業界の課題・解決に向けた活用事例まで解説

2024年10月17日(木) DX

食品業界において、DXに取り組みたいと思っているものの、その意味や効果がよくわからない方も多いのではないでしょうか。食品業界においてもDXは、市場変化への対応や、より厳格な品質管理などに有効です。本記事では、DXで解決したい食品業界の課題や、食品業界におけるDX活用事例などを解説します。

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食品業界のDXに関する基礎知識

ここでは、食品業界のDXに関する基礎知識として、以下の3つを解説します。

  • DXの意味
  • 2025年の崖
  • デジタル化との違い

それでは、1つずつ解説します。

DXの意味

基礎知識の1つ目は、DXの意味です。DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、直訳すると「デジタルによる変革」となります。DXには、明確な定義こそないものの、経済産業省では以下のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

日本でも、国をあげてDX化が推進されています。ただ、富士電機の調査によると、食品業界従事者の42.2%が、DXという言葉について”あまり使われていない”と回答しています。このことから、食品業界においてDX化が遅れているものと推察されます。しかし、DXの意味を正しく理解し、着実に自社に取り入れていくことで、業界や市場全体の活性化につながるでしょう。

出典:デジタルガバナンスコード 2.0|経済産業省
出典:食品製造業・食品工場に関する動向調査の結果 | 富士電機
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2025年の崖

基礎知識の2つ目は、2025年の崖です。「2025年の崖」は、経済産業省が2018年にまとめた「DXレポート」で提唱された概念です。そのレポートでは、日本企業がDXを進められなかった場合、最大で年間12兆円の経済的損失が出ることを報告しています。また、2025年の崖を引き起こすと思われる主要因は、以下の5つです。

  • 経営戦略の不在
  • 既存ITシステムの老朽化・肥大化
  • DXを進められるIT人材の枯渇
  • 肥大化したシステムに係るユーザー企業とベンダー企業間の軋轢
  • 日本の情報サービス産業で用いられるビジネスモデルの陳腐化

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ | 経済産業省

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デジタル化との違い

基礎知識の3つ目は、デジタル化との違いです。「デジタル化」は、様々なものを電子化することを指す言葉です。以下に2つ、デジタル化の例を示します。

  • 今まで手書きで作成していた書類をPCで作成
  • 今まで手紙でやりとりを行っていた内容を、メールでやりとり

ただ、DXと異なりデジタル化では、細かな選択や判断は最終的に人間の手で行います。それに対し、DXではAIなどにより、人間のニーズに合わせてサービス提供や製品製造を実現しようとしています。つまり、デジタル化で人間が行ってきた細かな選択や判断は、DXでは人間が行う必要がありません。このように、「DX」とは「デジタル化」とは似て非なる概念で、一歩先の考え方だと言えるかもしれません。

DXで解決したい食品業界の課題

ここでは、DXで解決したい食品業界の課題として、以下の4つを解説します。

  • 人口減少
  • 確実な品質管理
  • ニーズの変化
  • 食卓に届くまでの無駄の多さ

それでは、1つずつ解説します。

人口減少

課題の1つ目は、人口減少です。令和3年版高齢者白書によると、2065年に日本全体の人口は約8.8千万人になり、高齢者1人を現役世代1.3人で支えなければならないと試算しています。それに伴い、日本国内において食品の需要が減少するため、商品開発やコストカットなどに今まで以上に取り組まなければなりません。また、現役世代も減少するため、労働力確保も大きな課題となるでしょう。それらの問題を解決するために、DXの活用が求められているのです。

出典:令和3年版高齢者白書(全体版) | 内閣府

確実な品質管理

課題の2つ目は、確実な品質管理です。食品業界に対する品質の要求基準は高まっており、2021年6月にはHACCPが義務化されました。HACCPでは、食品会社に対し、「原材料を加工する際に、微生物による汚染や金属などの異物混入がないかを分析し、継続的に監視・記録すること」を求めています。

また、トレーサビリティが求められる場面も増えてきました。これは、「食品の最終加工段階における衛生状態管理だけでなく、原料の原産地・食品加工地・食卓まで一連の流通経路などを明確にすること」です。HACCPとトレーサビリティの背景には、徹底した品質管理が求められていることがあります。ただ、多くの食品は様々な原料を使っており、品質管理は複雑になります。そのため、食品安全管理システムを用いて確実に品質管理を行うには、DXが不可欠なのです。

出典:食品企業の安全・信頼対策、標準化 | 農林水産省
出典:食品のトレーサビリティ | 農林水産省

ニーズの変化

課題の3つ目は、ニーズの変化です。流通網や情報網の発達により、一般の方でも世界中の様々な食品を手にすることができるようになりました。長年にわたって愛される商品がある一方で、中食・外食問わず商品のライフサイクルが短くなっていることも事実です。消費者ニーズの多様化に応えるには、消費行動データを的確に分析し、それを元に商品開発やマーケティング活動を行うことが重要です。それらの業務にも、DXは有効と考えられています。

食卓に届くまでの無駄の多さ

DXで解決したい食品業界の課題の4つ目は、食卓に届くまでの無駄の多さです。原料を原産地から仕入れ、食品加工所で製品化して流通に乗せるまでには、多種多様な業者が関わって、非常に複雑なシステムを生み出しています。また、食品が食卓に届くまでに関わるのは企業だけではありません。消費者に安全な食品を提供するにあたって、多くの行政機関も関係しているのです。例えば、消費者庁が管轄する食品表示法は、毎年多くのルール更新があります。

このような大規模なシステムゆえに、食品業界には無駄が少なくありません。特に注意しなければならないのが、「食品ロス」です。環境省の調査によると、日本では2020年度は約522万トンもの食品ロスが発生したと推計されています。食品ロスは、環境面はもちろん、企業活動にも影響を与えるため、少しでも減らさなければなりません。しかし、DXで食卓まで無駄なく食品を届けるシステムを実現できれば、食品ロスの減少が期待できるでしょう。

出典:食品表示法等(法令及び一元化情報) | 消費者庁
出典:我が国の食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について | 環境省

食品業界におけるDX活用事例

ここでは、食品業界におけるDX活用事例として、以下の2つを解説します。

  • 事例1
  • 事例2

それでは、1つずつ解説します。

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事例1

事例の1つ目は、加工食品メーカーにおける事例です。このメーカーは、「スマートファクトリー」と呼ばれる次世代型生産工場を建設しました。スマートファクトリーでは、徹底的な省人化と自動化を行いました。今まで人力で行っていた原料や包材の移動や検査などを、ロボットによって代替することで、ヒューマンエラーの抑制や社員の残業時間削減に成功しています。

また、この加工食品メーカーでは下記のDX推進を実施しています。

  • 今まで製造工程において180以上のシステムを連動させていたが、連動させるシステムを8割以上削減。業務工数の削減やシステムの保守料金の削減に成功。

  • 2018年より、社員に貸与するPCとして携帯性の高い機種を採用し、コラボレーションプラットフォームによる情報共有を促進。結果、新型コロナウイルス感染症拡大防止に伴う在宅勤務も、無理なく移行することに成功。

事例2

事例の2つ目は、調味料メーカーにおける事例です。このメーカーでは、工場内に様々なセンサーを設置することで、物資や製品内の成分濃度などに関する時系列データを収集します。また、今まで蓄積してきた生産効率を示す指標データをもとに製造プロセスを見直し、熟練者に依存しない製造モデル構築を目指しています。商品開発ではロボットにより実験データを高速・大量に取得することで、AIと連動して商品開発スピードの高速化に成功しています。

まとめ

本記事では、DXで解決したい食品業界の課題や、食品業界におけるDX活用事例などを解説しました。食品業界は、人々の生活を支える重要な産業の1つです。一方で、人口減少など課題は数多く存在し、DX推進が思うように進められてない会社も食品業界では少なくありません。ぜひ本記事を参考にして、あなたの会社でもDXによる自社の課題解決を意識してみてはいかがでしょうか。

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