労働人口の低下に歯止めをかけるべく、政府主導で進められている「働き方改革」。その一環として注目を集めているのが、オフィスに出社することなく業務を行える「テレワーク」です。コロナ禍において出社勤務が難しい状況となりテレワークの利用が一気に拡大しましたが、メリットがある一方デメリットもあり、今後も課題を解決する必要があることがわかってきました。コロナ前と後の働き方改革によるテレワークはどう違うのか。基礎知識を踏まえ、導入するメリットや導入することで発生するデメリット、実際に導入する際のポイントなどを紹介していきます。
目次
コロナ以前に進めた働き方改革によるテレワーク
働き方改革のスタートとして、長時間労働の是正、「非正規」という言葉の一掃、多様な働き方を実現するために、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年7月6日に交付されました。「一億総活躍時代」と銘打った国の政策の一つで、働き方の多様性を実現し、出産や子育て・介護などの理由により離職した中間年代層に再び働く機会を作り、格差の固定化を防ぐことで、働き手を増やし出産率を向上させ労働生産性を上げることを目的として実施されています。
政府は働き方改革を実施することで、生産性向上や就業機会の拡大と意欲の向上、能力を十分に発揮できる職場環境づくりを目指しました。その働き方改革の柱が「テレワーク」という働き方でした。テレワークとは情報通信技術を駆使しして会社以外の場所でも仕事ができるように在宅勤務やサテライトオフィスなど勤務することで、大手企業はいち早くこの方法を取り入れて優秀な人材を確保し続けることに成功しています。
また、早くからテレワークを実施していた企業はコロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言においても比較的スムーズにテレワーク体制に入ることができました。総務省の調査によると、2020年3月でのテレワーク普及率は17.6%でしたが、緊急事態宣言後の同年5月には56.4%へと上昇しています。ニューノーマルといわれるアフターコロナにおいてもテレワークを「継続したい」という労働者は多く、今後もテレワークは拡大し続ける傾向にあります。
働き方改革の柱だったテレワーク
テレワークは政府の政策の一つである働き方改革の柱でした。情報通信技術をフル活用することで、一億総活躍時代を実現するという世界から遅れを取り出した日本がもう一度返り咲くための手段とも言えます。しかしコロナウィルス蔓延により働き方を変えざるを得なくなった今、どのような方法で実施することが有効なのでしょうか。
以下2つの視点で説明します。
- テレワークの3つのスタイル
- コロナで進化したテレワーク
それでは、一つずつ解説します。
テレワークの3つのスタイル
テレワークには、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」などの方法が想定されています。在宅勤務は、労働者が自宅でパソコンや電話などを活用し、オフィスとやり取りをしながら働くことを指し、モバイルワークは移動中や出先など、ちょっとした時間にデバイスを使って働く方法です。サテライトオフィスは、自宅やオープンスペースではなく、企業が準備した働くためのスペースで業務を行います。その企業が専用で使用するスポットオフィスや専用サテライトもあれば、複数の企業が共同で使用するサテライトやレンタルオフィスもあるなど、そのスタイルはさまざまです。政府は将来的に全労働人口の10%をリモートワーカーにすることを目指しており、導入した企業に助成金が支給されるなど、リモートワークは働き方改革の中でも重要視されています。
コロナで進化したテレワーク
コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言は多くの企業にとって働き方を見直す機会になりました。これまで毎日当たり前のようにオフィスに出勤して仕事をしていましたが、できる限り人との接触を避けることが求められテレワークの一つである在宅勤務が推進されました。突如テレワークが始まり企業も社員も戸惑うことも多かったことでしょう。様々なメリットの発見や対策が必要な課題が浮き彫りとなりましたが、アフターコロナの時代にもテレワークの利用拡大が予想されるため企業はそのニーズに応えていくことで、優秀な人材を確保すること、また、非常事態であっても事業を継続させる手立てを考える必要があると言えます。
テレワークで働き方改革を進めるメリット
テレワークで働き方改革を進めるメリットは以下の3つです。
- 離職率の低下
- コスト削減
- 非常時のリスク分散
それでは、一つずつ解説します。
離職率の低下
テレワークで働き方改革を進めるメリットの1つ目は、離職率の低下です。育児や介護、病気・怪我の療養などを理由として、やむなく退職を選択する労働者も珍しくありません。リモートワークが可能になると、事情のある労働者が自宅や近所で働けるようになるため、退職せずに済む可能性が高まります。離職率が低下すれば、新たな人材が戦力になるまで一時的な生産性の低下が起きたり、新たな人材を採用・育成するためのコストや時間がかかったりするリスクを軽減できるでしょう。また、オフィスから遠く離れた地域からでも働いてもらえるため求人への応募増加も期待できますし、働きやすい環境が整った企業だとしてブランドイメージの向上も見込めます。リモートワークの環境が整うことは、労働者と企業双方にとって大きなメリットがあるのです。
コスト削減
テレワークで働き方改革を進めるメリットの2つ目は、コスト削減です。リモートワーカーが増えると、恒常的にオフィスに出社する労働者の数が減少するため、労働者へ支給する交通費の削減が可能です。また、人数が減ればオフィスの規模を縮小することもでき、賃料や通信費、照明・空調などにかかる電気代などの節約につながります。消費電力量の削減は環境負荷の軽減にもつながり、社会的な意義も得られるでしょう。
非常時のリスク分散
テレワークで働き方改革を進めるメリットの3つ目は、非常時のリスク分散です。大規模な地震や水害などが起きた場合、オフィスにすべての労働者と設備が集中していると、甚大な被害が発生します。この点、リモートワークで労働者とパソコンなどの備品が分散していれば、事業の継続性確保が可能です。ダメージを受けなかった場所の労働者が働いてカバーでき、リスク分散に役立ちます。
関連記事:事例から見るテレワーク 導入企業に起こっている7つの効果・メリット
テレワークで働き方改革を進めるデメリット
テレワークで働き方改革を進めるデメリットは以下3つです。
- 長時間労働になりやすい
- 勤退管理が難しい
- 情報セキュリティーリスクが高まる
それでは、一つずつ解説します。
長時間労働になりやすい
テレワークで働き方改革を進めるデメリットの1つ目は、長時間労働になりやすいということです。リモートワークには、仕事とプライベートとの切り替えが難しく、長時間労働になりやすいという課題があります。これは生活スペースで働く在宅勤務で特に多く見られる課題ですが、それ以外のリモートワークでも、同僚や上司の目が届きにくい分、同様に長時間労働をしてしまうケースが珍しくありません。リモートワークは長時間労働解消を目指した働き方改革の一環であるため、逆効果になってしまうのは無視できない問題です。
勤退管理が難しい
テレワークで働き方改革を進めるデメリットの2つ目は、勤退管理が難しいということです。長時間労働になりやすいという課題の一方で、逆に業務を「サボる」労働者が出る恐れもあります。リモートワークは基本的に労働者が一人で業務を行うため、上司や同僚の目が届きにくく、正確な勤怠管理が非常に難しいのです。特に、自宅にはテレビや趣味の道具などの誘惑が多く、業務に集中できなくなる労働者も少なくありません。このような問題を解決するには、事業場外みなし労働制を導入したり、リモートワーク用のしっかりとした勤怠管理システムを整備したりすることが欠かせません。
情報セキュリティーリスクが高まる
テレワークで働き方改革を進めるデメリットの3つ目は、情報セキュリティーリスクが高まるということです。リモートワークでは、外部のデバイスから社内システムにアクセスして業務を行うのが一般的です。セキュリティ対策が不十分なデバイスだと、ウィルス感染などで機密情報が外部に流出するリスクが高まります。ほかにも、労働者が出先でデバイスを紛失したり、第三者に業務中のパソコン画面を盗み見られたりする恐れもあるため、徹底したセキュリティ対策が必要です。
自社の働き方改革を進めるテレワーク運用3つのポイント
自社の働き方改革を進めるテレワーク運用3つのポイントは以下の3点です。
- トップダウンで導入を宣言する
- プロジェクト化して体制を整える
- ツールの導入を検討する
それでは以下、解説します。
トップダウンで導入を宣言する
自社の働き方改革を進めるテレワーク運用3つのポイントの1つ目は、トップダウンで導入を宣言する、です。まずは社長や役員自らが自社においてテレワークを導入し推進していくことを宣言することが大切です。社員がテレワークに移行しやすくなるように経営トップや経営層の意識を変え企業の風土改革を行います。トップの意識が変わることは、社員の働き方に大きな影響を与えます。
プロジェクト化して体制を整える
自社の働き方改革を進めるテレワーク運用3つのポイントの2つ目は、プロジェクト化して体制を整えるということです。経営トップがテレワーク導入の宣言をしても、各部署に導入を任せてしまうとうまくいかないことがあります。このような場合は、例えば経営トップ直轄のプロジェクトチームを作り全社的な横断組織とすることが大切です。テレワークにおいてのルール作りや新しい人事評価指標の検討、情報セキュリティの確保、また必要に応じたツールの導入などを決定していきます。
ツールの導入を検討する
自社の働き方改革を進めるテレワーク運用3つのポイントの3つ目は、ツールの導入を検討するということです。テレワークにおいて重要なのは例えオフィスでなくても、オフィスと同じ環境下で仕事を進めることができることです。そのためにはツールの導入が欠かせません。テレワークを実施している企業において特に重要視しているのが、部下・同僚とのコミュニケーションであり、web会議システムやチャットツールを導入することで懸念は払拭されます。このほかにも個人に蓄積するノウハウの共有として社内wikiの活用や進捗管理ができるツールなど必要に応じて導入を検討することをお勧めします。
関連記事:テレワーク・リモートワーク導入に欠かせない!5つの必須ツールとその使い方
まとめ
一億総活躍時代の目玉企画だった働き方改革の一つであるテレワーク。コロナウィルス感染拡大の影響を受けて大きな広がりを見せました。今後もテレワークの利用は拡大すると予想されています。出産・育児や介護を機に離職した働き盛りの世代がもう一度戻りやすいように整えられた制度ではありますが、その反面課題も見えてきており、育児や介護から手が離せない状況によって両立が難しいケースも出てきています。これは子どもや介護される側が近くに常に人がいることで頼りがちになることが原因です。こうした状況を声に出せず抱えてしまわないよう、常にコミュニケーションを取りながら課題を一緒に解決していく必要もあるでしょう。
本稿では、働き方改革から始まったテレワークがコロナ禍によってどう変わったか、また働き方改革としてテレワークを取り入れるメリットやデメリット、取り入れる際のポイントを解説してきました。これからテレワークを導入する企業の担当者の方はぜひ参考にしていただきツールの導入などで、社員がどのような働き方であっても働きやすいと感じられる環境を整えていくことが大切です。
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