属人性とは?意味や属人化との違い、デメリット、解消方法(属人性の高い業務の標準化)を解説

2025年05月30日(金) ナレッジ共有

 

属人性とは、業務が特定の個人の知識やスキル、経験に依存し、他の人が対応できない状態を指します。

この状態では、担当者の不在時に業務が滞るリスクが高まり、組織全体の効率に悪影響を及ぼします。属人性が高まる背景には、業務内容の複雑さや情報共有の不足、実力主義的な風土などが挙げられます。

属人性が蓄積すると、業務遅延や品質低下に加え、ナレッジが社内に蓄積されにくくなるという問題も発生します。このような課題を解消するには、業務内容の洗い出しや標準化、マニュアル作成といった取り組みが効果的です。こうした取り組みにより、誰でも業務を遂行できる環境を整えリスクを最小限に抑えることが可能です。

この記事では、ビジネスにおける属人性の問題点(デメリット)と、その解消方法について、具体的に解説します。

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目次

ビジネス上での属人性とは?意味を解説

ビジネスにおける属人性とは、業務の進め方や情報が特定の担当者だけに依存している状態を指します。このような状態では、その人が不在になると業務が滞るリスクが高まります。

問題なのは、スキルの高い人がいることではなく、その知識やノウハウが共有されず、組織全体に活かされていないことです。これにより、業務の再現性が失われ、企業の継続的な成長を妨げる原因となります。

属人性は、個人の問題ではなく、情報共有や業務プロセスが整っていない組織の課題として捉える必要があります。

属人的との違い

属人的も属人性と同じ意味で用いられる言葉ですが、使われる文脈や用法が異なります。属人的とは、個人の特性や意見が強く反映される状態のことを指します。例えば、ある決定が「属人的な判断」である場合、客観的な基準よりも、特定の人物の個人的な見解や好みに基づいていることを意味します。属人性は業務が個人に依存している状態を指すのに対し、属人的は個人の主観や特性が強く影響している状況を表す言葉です。

属人化との違い

属人化は、業務が特定の個人に依存する関係が問題となるほどに進行した状態を指します。つまり、属人性が高まり属人化が進むと、組織はその個人の不在時に業務遂行が困難になるリスクに直面すると言えます。

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業務の属人性が高まる原因

業務の属人性が高まる原因

業務の属人性が高まる原因は、主に以下のとおりです。

  • 理解するのに高度な知識が必要
  • 多忙で情報共有する時間がない
  • 業務の内容を共有できない
  • 属人化は高評価を得やすい
  • 実力主義の風土がある
  • マニュアルや手順書が整備されていない
  • 評価を意識して知識を独占する傾向がある
  • リモートワークによるコミュニケーション不足

理解するのに高度な知識が必要

高度な専門知識や長年の経験が求められる業務は、特定の人に依存しやすくなります。たとえば、複雑なITシステムの運用、法務や税務、研究開発などがその代表です。

こうした業務はマニュアルがあっても、内容を深く理解して実践するのが難しく、結局は担当者のスキルや経験に頼らざるを得ません。そのため、他の人がすぐに代わりを務めるのが難しくなり、属人化が進む要因となります。

特に、社内で人材育成が十分に行われていなかったり、対応できる人材が少なかったりする場合は、属人化のリスクがさらに高まります。

多忙で情報共有する時間がない

担当者が日々の業務に追われていると、自分の知識やノウハウを文書化したり、他のメンバーに教えたりする余裕がなくなります。

たとえば、月末の経理業務で手一杯の社員が、引き継ぎ資料を作る時間を取れなかったり、営業担当者が顧客対応やノルマに追われ、成功事例を共有できなかったりするケースです。

たとえ情報共有の仕組みがあっても、実際に活用されなければ意味がありません。特に人手不足の職場では、マニュアル作成やノウハウ共有が後回しにされ、属人化が進みやすくなります。

業務の内容を共有できない

業務の属人性が高まる原因の3つ目は、業務の内容を共有できないことです。

情報共有を行うシステムがないと、業務に必要な情報を特定の社員のみが持っているという状況が生じやすくなります。また、情報共有に役立つシステムやツールを導入していても、うまく活用していないケースも少なくありません。加えて、企業内に情報共有を促す企業文化が欠けていると、社員は自分の知識や情報を他の人と共有することをためらうことがあります。その結果、業務の属人化が起こります。

属人化は高評価を得やすい

業務の属人性が高まる原因の4つ目は、属人化は高評価を得やすいことです。

特定の社員にしかできない業務は、上長が実績を評価せざるを得ない状況になりがちです。この場合、業務を独占しようと、担当者が属人化を解消したがらないこともあります。属人性の高い業務に高評価を与える状態が続くと、属人化を助長してしまうでしょう。

実力主義の風土がある

業務の属人性が高まる原因の5つ目は、実力主義の風土があることです。

個人の実力を重視する環境では、一人一人の成果や能力が高く評価されるため、社員は自身の知識やスキルを独占しようとします。すると、業務に必要な知識や技術は個人に集中し、業務が属人化する恐れがあります。

マニュアルや手順書が整備されていない

業務のやり方が文書化されていない、または古いマニュアルしかない場合、ノウハウは担当者の頭の中に留まりがちです。これでは他の人が業務を引き継ぐのが難しくなり、属人化が進んでしまいます。

マニュアルが整備されていない背景には、情報共有への意識の低さや、業務の見える化を重視しない組織文化があることも多く、これは個人ではなく組織全体の課題です。

評価を意識して知識を独占する傾向がある

特定の業務を「自分にしかできない仕事」として抱え込むことで、職場での存在価値を高めようとするケースもあります。これは、成果や専門性が強く評価される環境で起こりがちです。

その結果、担当者があえてノウハウを共有せず、後任やチームに教えないことで、意図的な属人化が発生します。短期的にはその人の評価が上がるかもしれませんが、長期的には組織にとって大きなリスクになります。

リモートワークによるコミュニケーション不足

リモートワークの普及により、気軽な相談や雑談がしづらくなり、非公式な情報共有の機会が大きく減りました。以前ならオフィスでのちょっとした会話で伝わっていた業務のコツや注意点も、オンラインでは意識的に共有しなければ伝わりません。

とくに、新入社員や異動してきたメンバーの育成においては、OJTがうまく機能せず、業務の理解が断片的になりがちです。その結果、業務の中心が特定の人に集中しやすくなり、属人化を加速させる要因となっています。

 

社内の属人化を解消できるナレッジ共有ツール「NotePM」

属人化が発生するメカニズム

属人化が発生するメカニズムと、属人化が解消されることによる効果は、以下のとおりです。

属人化が発生するメカニズム

属人化が高まる原因や、解消方法については、後述しています。

属人性の高い業務があることデメリット・リスク

属人性の高い業務があることデメリット・リスク

属人性の高い業務があることの主なリスクは、以下のとおりです。

  • 業務や対応の遅延が起こる
  • サービスや品質の低下が起こる
  • 企業がナレッジを蓄積できない
  • 評価の基準が曖昧になる
  • 担当者モチベーション低下につながる
  • 業務の属人化が内部統制を崩壊させる

それぞれについて、詳しく解説していきます。

関連記事:ナレッジマネジメントツールおすすめ30選|導入のメリットや選び方を解説

業務や対応の遅延が起こる

業務が特定の担当者に依存し、その人しか内容や進捗を把握していない状態になると、「業務のブラックボックス化」が起こります。このような状況では、担当者が急な休暇や異動、退職などで不在になると、業務が大幅に遅れる、あるいは完全に止まってしまう恐れがあります。

たとえば、顧客対応が滞れば顧客満足度の低下につながり、信頼を損ねる結果になりかねません。さらに、重要なプロジェクトの納期が遅れることで、企業の信用が傷つく可能性もあります。

また、一つの業務の遅延が他の業務にも影響を及ぼし、組織全体の生産性を落とす「ドミノ効果」を引き起こすケースも少なくありません。これは単なる作業の停滞にとどまらず、企業の競争力を失う原因となり、収益機会を逃すリスクにも直結します。

サービスや品質の低下が起こる

属人性の高い業務があることのリスクの2つ目は、サービスや品質の低下が起こることです。

特定の社員が欠けた場合、業務の遂行が遅延したり停止したりすることで通常通りのサービスや品質を保てません。特に、その担当者が病気になる・退職する・休暇を取るといった場合に、業務の品質が低下する恐れがあるでしょう。

企業がナレッジを蓄積できない

業務が属人化している状態では、担当者が持つ知識やノウハウ、過去の成功・失敗事例といった「実践的な情報」が、その人の中だけにとどまってしまいます。

そのまま担当者が退職や異動で抜けてしまうと、こうした貴重な情報が社内に残らず、組織として蓄積できないという大きな損失が生じます。後任者は一から仕事を覚える必要があり、引き継ぎに時間がかかるのは避けられません。

さらに、組織全体が過去の経験から学び、業務を改善するチャンスも失われてしまいます。その結果、同じミスが繰り返されたり、非効率なプロセスが温存されたりと、成長の妨げになる恐れがあります。

つまり、属人化によって企業の「知的資産」が活かされない状況が続けば、長期的な競争力の低下につながる可能性があるのです。

評価の基準が曖昧になる

属人性の高い業務があることのリスクの4つ目は、評価の基準が曖昧になることです。

業務が特定の社員に集中していると、その社員以外は業務内容を正しく理解できなくなり、評価の基準が不明瞭になってしまいます。評価が正確に行えないと、その社員だけでなく、周りの同僚も仕事に対して不満を持つことがあるでしょう。

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担当者モチベーション低下につながる

業務が一部の担当者に集中すると、その人に過剰な負担がかかり、場合によっては長時間労働や休日出勤が常態化することもあります。心身へのストレスが大きく、健康を害する要因にもなりかねません。

こうした状態が続くと、強いプレッシャーや孤立感が積み重なり、モチベーションの低下やバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こすリスクが高まります。

さらに、他の従業員から見ても「特定の人しかできない仕事」があることで、不公平感やキャリア形成の妨げと感じられ、職場全体の士気が下がる可能性も否めません。結果として、優秀な人材が離れてしまうという事態に発展する恐れがあります。

業務の属人化が内部統制を崩壊させる

属人化が進み、業務内容がブラックボックス化すると、誰が何をしているのか分かりにくくなり、チェック体制が機能しづらくなります。その結果、ミスや不正が見逃されやすくなり、思わぬコンプライアンス違反につながることもあります。

もしそうした問題が表面化すれば、企業の信頼性や社会的評価を大きく損なう事態にもなりかねません。

属人性の高さを解消する方法|業務を標準化するには?

属人性の高さを解消する方法|業務を標準化するには?

属人性の高い業務を標準化する方法には、以下の3つがあります。

  • 業務内容の洗い出しを行う
  • 業務マニュアルを作成する
  • 業務マニュアルを共有して運用する
  • 定期的に情報共有の場を設ける
  • ITツールを活用する

それぞれについて、詳しく解説します。

業務内容の洗い出しを行う

属人化を解消する第一歩は、どの業務が誰に依存しているのかを正確に把握することです。これは「業務の見える化」とも呼ばれる重要なステップです。

まずは、属人化が疑われる業務の担当者に対して、日々どんな作業をしているのかをヒアリングやアンケートで詳しく確認します。具体的には、以下のような内容を洗い出します。

  • 実際の作業内容や流れ
  • 判断の基準やポイント
  • 使用しているツールや資料
  • 必要な知識・スキル
  • 過去のトラブルとその対応方法

このとき大切なのは、単に手順を並べるだけでなく、「なぜそうしているのか」「他のやり方はあったのか」といった背景や考え方まで把握することです。

集めた情報はフローチャートや業務一覧表などに整理し、業務全体の流れを客観的に可視化します。このプロセスは、属人化の問題点を関係者全員が認識するきっかけとなり、今後のマニュアル作成や業務改善の土台にもなります。

業務マニュアルを作成する

業務の洗い出しが終わったら、その内容をもとに誰でも業務を理解し、同じように実行できるマニュアルを作成します。これは、属人化を防ぐうえで欠かせないステップです。

マニュアルに盛り込むべき内容は以下のとおりです。

  • 業務の目的と全体の流れ
  • 作業手順(誰が・いつ・何を・どうやるか)
  • 判断に迷う場面での基準
  • 使用するツールやシステムの使い方
  • よくあるトラブルとその対処法
  • 過去の具体的な対応事例
  • 関連資料の保存場所 など

内容はテキストだけでなく、図・表・スクリーンショット・動画なども使って、視覚的にわかりやすくすることがポイントです。

最初から完璧なマニュアルを作ろうとせず、まずはチェックリストや業務フロー図など、簡単な形からスタートしましょう。実際に使ってもらいながら、関係者のフィードバックを取り入れて、少しずつ改善・更新していくことが大切です。

完成したマニュアルは、誰でもすぐアクセスできる場所に保管し、常に最新の情報に保つ仕組みもあわせて整えておきましょう。

業務マニュアルを共有して運用する

属人性の高い業務を標準化する方法の3つ目は、業務マニュアルを共有して運用することです。

作成したマニュアルを社内で共有し、実際の業務で活用していきます。共有の方法としては、社内の情報共有システムや文書管理システムの利用が効果的です。このとき、全社員が業務マニュアルへ容易にアクセスできる環境を整えることが重要です。また定期的に見直しを行い、改善点を業務マニュアルに反映させることで、実務に即した状態に保てます。業務の標準化と効率化を実現するには、業務マニュアルが常に最新の状態で社員に活用されていることが重要です。

定期的に情報共有の場を設ける

業務マニュアルを作って終わりではなく、定期的なミーティングや勉強会などを通じて、業務の進め方やノウハウをチーム内で共有する機会をつくることが大切です。

こうした場があることで、マニュアルだけでは伝わらない“暗黙のコツ”を共有できたり、日々の業務の中で見つかった課題や改善案を早めに話し合ったりすることができます。

情報共有を日常的な業務の一部として組み込み、当たり前の習慣にすることが、属人化を防ぐ大きな力になります。

ITツールを活用する

情報をスムーズに共有し、業務を標準化するには、ITツールやシステムの活用が非常に効果的です。

NotePMのような社内Wikiや、業務プロセスを管理できるBPMツールなどのITツールがおすすめです。

業務を可視化し標準化に役立つツールの種類と、導入目的を以下の表にまとめました。

ツール種別 主な目的 活用例
社内Wiki・ナレッジ共有 情報の一元管理と共有による属人化の防止 マニュアル、FAQ、業務手順の共有・検索
BPMツール(業務プロセス管理) 業務プロセスの可視化と標準化 業務フローの作成・管理、手順の標準化
RPA(業務自動化) 繰り返し業務の自動化による負担軽減 データ入力・転記などの定型業務の自動化

こうしたツールを導入する際は、自社の課題や規模に合ったものを選ぶことがポイントです。導入して終わりにせず、しっかり活用が進むように、社内での使い方やルールも整えていきましょう。

社内の属人化を解消できるナレッジ共有ツール「NotePM」

属人化に関するよくある質問(Q&A)

Q. 「属人化」と「専門性」はどう違うのですか?うちの会社のベテランは大丈夫でしょうか?

A. 「専門性」は、その人が持つ深い知識やスキルであり、企業にとって大切な資産です。
一方で「属人化」は、その知識やノウハウが他の人に共有されず、その人しかできない状態になっていることを指します。

ベテラン社員が優秀であっても、その方が不在になった途端に業務が止まるようであれば、それは属人化のリスクがあるということです。

大事なのは、知識や経験をマニュアルやOJTでしっかり共有し、組織全体の資産にしていくことです。ベテランの力を活かしつつ、次世代へつなげる仕組みづくりがカギになります。

Q. 小さな会社で人もカツカツです。属人化解消なんて取り組む余裕がないのですが…。

A. 中小企業ではリソース不足がネックになりがちですが、だからこそ属人化は放置できない課題です。担当者が一人抜けただけで、業務が回らなくなるリスクがあるからです。

すべての業務を一気に標準化しようとする必要はありません。まずは「この業務が止まると会社が困る」という最重要業務から一つだけ選び、小さく始めるのがポイントです。

チェックリストや簡単な手順メモ、口頭OJTだけでも効果があります。完璧ではなく、前進することを意識しましょう。

Q. 属人化している本人が、情報共有やマニュアル作成に協力的ではありません。どうすればよいでしょうか?

A. 非協力的な背景には、「自分の立場を守りたい」「忙しくて余裕がない」「情報を渡す必要性を感じていない」などの心理があることが多いです。

まずは、なぜ協力してくれないのか、丁寧に聞くことから始めてみてください。

その上で、「情報共有することで、負担が減る」「後進の育成にもつながる」「評価にもつながる可能性がある」など、本人にとってのメリットを明確に伝えることが効果的です。

経営層や上司からの方針として伝えたり、人事評価制度に組み込んだりすることも検討してみましょう。

Q. マニュアル作成に時間がかかりすぎて、なかなか進みません。良い方法はありますか?

A. マニュアルづくりが止まる原因の多くは、「最初から完璧を目指してしまうこと」です。
まずは、以下のようなできる所からマニュアル作成をスタートしましょう。

  • チェックリストや業務フロー図から着手する
  • テンプレートを活用し、書く内容を統一する
  • インタビュー形式で情報を引き出し、分担して作る
  • スクリーンショットや動画ツールを使って効率化する
  • マニュアル作成の時間を事前に確保する

そして何より、「作って終わり」ではなく、運用しながら更新していくことが前提です。気負わず、継続を意識して進めましょう。

ビジネスでの「属人性」の意味を把握して解消しよう

本記事では、属人性の意味・原因・リスク・属人性の高い業務を標準化する方法を紹介しました。属人性の高い業務が組織に及ぼすリスクを認識することは、どの業種の企業にとっても重要です。特に、業務内容の洗い出し・業務マニュアルの作成・マニュアルの共有と運用による標準化の進め方は、ナレッジの蓄積を実現するために不可欠なステップです。自社にあった情報共有システムや文書管理システムなど便利なツールを導入して、業務の標準化を図りましょう。