多かれ少なかれ企業活動を行う過程で課題が生じるものですが、昨今の日本でよくある課題の1つが人材不足です。
省人化を進めるとしても、人材の数が少なすぎれば企業活動に限界が生じてしまいます。最悪の場合廃業を選択しなければなりません。
そのような事態を回避するために、他社の事例を参考にした様々な人材不足対策が必要です。
本記事では、人材不足対策が必要な背景や手法、取り組み事例を紹介します。人材の確保に苦労している方は、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
人材不足対策が必要になっている背景
多くの業界で人材不足が大きな課題になっています。ここでは、人材不足が必要になっている背景を2つ解説します。
- 労働人口の減少
- 優秀な人材を確保する難しさ
1つずつみていきましょう。
労働人口の減少
日本の労働人口は明確に減少傾向がみられます。
2024年に株式会社帝国データバンクが行った調査によると、正社員不足を感じている会社の割合は51.7%にのぼりました。その背景には少子高齢化と人口減少があります。
厚生労働省の報告書では、2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39％に達すると予想されています。
優秀な人材を確保する難しさ
優秀な人材の確保は、現在の労働市場において重要な課題です。
労働人口の減少だけでなく、よい人材を抱える企業が引き留めを強化していること、さらには副業の普及により転職のニーズが低下していることが要因として挙げられます。
人材不足対策が特に急務とされる業界
ここでは、厚生労働省や株式会社帝国データバンクの調査結果を参考に、特に人材不足が問題と考えられる業界を5つピックアップしました。
- 医療・介護業界
- 建設業界
- 運送業界
- 観光業界
- 情報サービス業界
1つずつ解説します。
出典：労働経済動向調査（令和6年11月）の概況｜厚生労働省
出典：人手不足に対する企業の動向調査（2024年10月）｜株式会社帝国データバンク
医療・介護業界
医療・介護分野では、特に介護における人手不足が深刻な状況となっています。
高齢化社会のため介護サービスの需要が大幅に増加することが予測されていますが、労働条件などが原因で人材確保が進んでいません。
特に、2024年4月から医師の時間外労働規制が始まり、医療現場全体での人材確保がより重要な課題となっています。
＞関連記事：介護業界で求められるDXとは？必要とされる背景・普及させる際の課題や導入事例などを徹底解説
建設業界
建設業界では、高度成長期に整備されたインフラの老朽化対策が急務です。
建設後50年以上経過する施設が2030年頃までに急増するため、更新事業の労働力需要がさらに増大するでしょう。しかし、肉体労働が求められる上に業務の性質上休日を取得しにくい傾向があるため、技能労働者が不足しています。
この状況を受け、業界全体でのDX推進などが急務です。
＞関連記事：建設DXが建設業界を変える！？解決が期待できる課題や活用事例などを解説
運送業界
運送業界では、宅配便の取扱数が急増する一方で、ドライバーの減少や高齢化が進行しています。
ただでさえ人手不足の傾向が続いている上に、さらに2024年4月からの時間外労働時間の上限規制により、人手不足がより深刻化することが懸念されています。
そのため、早急に対応策の検討が必要です。
観光業界
旅館・ホテルなどの観光業界では、24時間営業や長距離移動が必要な業務が多く、従業員の負担が大きいため、高い離職率が課題です。
さらに、コロナ禍の収束に伴う国内旅行客やインバウンド需要が増加していることを背景に、人手不足がより深刻化しています。
そのため、業界全体で新たな人材確保が大きな課題となっています。
＞関連記事：ホテル経営におけるDX推進を徹底解説！必要とされる背景・推進される業務や活用事例を紹介
情報サービス業界
情報サービス業では、企業のDX推進に伴いシステム関連需要が増加しています。
しかし、需要の割に供給が追いついていません。特に、従来型のIT人材ではなく最先端技術を扱える人材の確保が課題となっており、採用強化や人材育成などの対策が求められています。
人材不足対策を怠るとどのような問題が生じる？
ここでは、人材不足が企業に与える影響を3つ解説します。
- 労働環境の悪化
- 事業縮小・倒産
- 組織体制の硬直化
労働環境の悪化
人手不足が深刻化すると、まず職場の労働環境と従業員の働きがいに大きな影響が出ます。
一人当たりの業務量が増加すると、残業時間の増加や休暇取得の困難さが生じ、職場でのコミュニケーションも減少するでしょう。
その結果、ストレスが多い職場環境となり、従業員の企業への信頼や愛着が失われ、働きがいも低下しかねません。
このような状況では、新規採用者の早期離職が増加し、人手不足の悪循環に陥ることが懸念されます。
事業縮小・倒産
人手不足が慢性化すると、事業継続自体に影響が出かねません。
実際に、人手不足が原因の倒産は、今や珍しくない事象です。特に、長時間労働が慢性化して人材不足になりがちな業界では、労働時間規制の影響もあり人材確保がさらに難しくなるでしょう。このような業界では、これからも事業縮小・倒産が続くリスクが高いです。
組織体制の硬直化
人手不足は、組織の発展にも影響があります。
OJT型の人材育成を採用している企業は多いですが、人手不足の下では十分な時間を確保できません。特に新入従業員教育の際に、先輩従業員が丁寧に指導する時間的余裕がありません。結果として新人の戦力化が遅れるだけでなく、離職率も上昇傾向になっているのです。
若手人材の採用・定着が困難になると、組織の新陳代謝が停滞し組織の高齢化につながります。
人材不足対策9選
ここでは、人材不足対策として役立つ手法を9つ解説します。
- ITツールの活用
- アウトソーシングの活用
- 労働条件の見直し
- 福利厚生の見直し
- 組織風土の改善
- 教育・人事制度の見直し
- 採用方法の見直し
- 雇用形態の多様化
- 人材の多様化
自社で取り入れられる対策がないか考えてみましょう。
ITツールの活用
最近は、社内WikiやRPAなど、業務効率化や生産性向上に役立つITツール・システムが多数リリースされています。
これらのツールを活用すれば、業務の無駄を減らして従業員の負担を軽減できます。その結果、少ない人材でも業務を遂行できるため、人材不足対策になるでしょう。
アウトソーシングの活用
アウトソーシングは、限られた社内リソースを効果的に活用する上で有効です。
経理・情報システム・コールセンター業務など、専門性の高い業務を外部委託すれば、本来注力すべきコア業務に集中できます。場合によっては、オンラインアシスタントサービスの活用も検討しましょう。
＞関連記事：【2025年版】経理業務のアウトソーシングおすすめ7選を徹底比較！種類やメリット・選定ポイントまで紹介
労働条件の見直し
労働条件の見直しは、従業員の満足度向上に直結します。
時短勤務やフレックスタイムなど柔軟な勤務体制の導入だけでなく、給与・待遇の改善や副業の許可、さらにはシニア・女性が活躍できる環境づくりなどが考えられます。
様々な施策があるため、多角的な視点から導入の是非や詳細なルールを検討しましょう。
福利厚生の見直し
福利厚生の充実は、従業員の定着率向上に効果的な施策です。
健康保険や介護保険などの法定福利厚生に加え、住宅補助・慶弔休暇・自己啓発支援など、従業員のニーズに合わせた制度設計を試みましょう。
従業員の声を積極的に聞き、満足度の高い制度を構築することがポイントです。
組織風土の改善
組織風土の改善は、魅力ある職場づくりの基盤となります。
経営者の考えや企業理念を社内報などで積極的に発信し、社内の意識改革を進めましょう。また、社内イベントやシャッフルランチ会など、部署を越えたコミュニケーションを促進する取り組みも有効です。
＞関連記事：組織風土とは？社風や企業風土との違い、改善するための手法を解説！
教育・人事制度の見直し
教育・人事制度を見直せばで、人材の定着と成長につながります。
リカレント教育・キャリアアップ支援・評価基準の明確化など、テコ入れのポイントは多岐に渡ります。これにより、従業員のモチベーションが向上し、会社への帰属意識が高まるでしょう。
採用方法の見直し
採用方法を見直すには、自社が求める人材像の明確化が欠かせません。
求人媒体では仕事や組織の現状についてよい面・悪い面両方を伝え、入社後のミスマッチを防ぎましょう。また、SNSなど新たな採用チャネルを試すことも一手です。
これにより、採用活動の効率化や定着率の向上を図りましょう。
雇用形態の多様化
雇用形態の多様化も、人材確保の可能性を広げるため有効です。
正社員だけでなく、契約社員・パート・アルバイト・業務委託など様々な働き方に対応すれば、育児や介護と両立したい人材を確保できます。人件費の最適化にもつながるでしょう。
＞関連記事：働き方の多様性が求められている！その背景やメリットなどを解説
人材の多様化
これまで戦力として考えてこなかった人材も、これからはうまく活用することを考えてみましょう。
シニア世代なども、十分戦力になり得ます。
人材不足対策に取り組んでいる事例
人材不足対策の事例を参考にするとより具体的にイメージできるでしょう。ここでは、事例を3つ解説します。
- 建設業界A
- 観光業界B
- メーカーC
自社でも参考になる部分がないか考えてみましょう。
出典：中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集｜経済産業省
建設業界A
建設業界Aでは、1986年の男女雇用機会均等法施行を機に女性技術職の採用を開始し、当初は早期離職が続く中でも粘り強く女性従業員の採用を継続してきました。
その結果、女性を受け入れる企業風土が醸成され、現在では女性管理職も誕生するまでに至っています。
特筆すべきは、女性従業員の配属部門を限定せず、男性と同様に幅広い経験を積める機会を提供し、育児との両立を支援すべく時短制度も整備した点です。また、育児短時間勤務制度や再雇用制度の導入により、育休後の復職を促進することで、専門資格を持つ女性従業員の増加と定着率の向上を実現しています。
観光業界B
観光業界Bでは、従業員が生きがいを持って働ける職場づくりを目指し、経営の多角化を推進してきました。
本業の旅館業だけでなく、飲食業・物販業・旅行業・製造業など事業領域を多角化し、従業員が多様な働き方を選択できる環境の整備を図っています。また、組織力向上研修・リーダー研修・キャリアアッププログラムなど、充実した教育体制を整備しており従業員のスキル向上を実現させています。
その結果、ここ10年間で売上と従業員数がいずれも倍以上に成長しました。
メーカーC
メーカーCは、IT技術を活用した多品種小ロット生産について24時間無人化を実現し、従来の「3K」イメージから脱却を図りました。
自社開発の生産管理システムで職人のノウハウをデータベース化することで、加工技術の標準化に成功したのです。これにより、ルーチンワークを機械化する一方で、従業員の知的労働の促進を図っています。定期的にシステムエンジニアを採用することで、イノベーション創出の体制を整えてきました。
このような大胆な改革で、若手人材の採用・定着と生産性向上の両立を達成しています。
まとめ
人材不足対策が必要な背景には、労働人口の減少や優秀な人材を確保する難しさがあります。特に昨今では、建設業界や運送業界などで人材不足が深刻になっています。労働環境の悪化や組織体制の硬直化などのリスクがあるのです。
人材不足対策としては、ITツールの活用や組織風土の改善など様々な方法があります。他社の事例も参考にして、様々な方法を1つずつ試してみましょう。
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