近年、業務効率化と企業価値を上げることを目的とした、業務のDX化が急速に進んでいます。コールセンターも、DX化を推奨されている業務の1つです。多くのコールセンターは、人材不足や勤務時間の長時間化などが問題として挙げられており、DX化によってこれらの問題が解決する可能性があります。本記事では、コールセンターでDXが注目されている理由や、DX化のメリットを解説するとともに、コールセンターでのDX化の手順について解説します。
目次
コールセンターのDXが今注目される理由
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、経済産業省によって下記のように定義されています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
つまり、データやデジタル技術を利用したサービスやビジネスモデルを活用することで、企業間競争の優位に立つことをDXと言います。
また、経済産業省のDXレポートには、DXの対応策が必要な分野として、「営業等の競争領域に続く、受注やコールセンター等、個々の注文を受ける部分」と記載されています。実際にコールセンターでは、ほとんどの業務を有人で対応しています。そのため、企業にとって人件費のかかる部署であったり、労働時間が長くなってしまったりという課題が多く見られます。
コールセンターでDXを進めることで、これらの課題解決や企業のさらなる繁栄につながる可能性が高まるでしょう。
コールセンターでDXを進めるために把握すべき現状と課題
コールセンターでDXを進めるために把握すべき、3つの現状と課題について解説します。
- ノウハウが蓄積しにくい
- 属人化しやすい
- 作業効率にばらつきが出る
1つずつ、解説します。
ノウハウが蓄積しにくい
1つ目は、ノウハウが蓄積しにくいことです。多くのコールセンターは、長時間稼働のために多数の人員が必要です。しかし、労働時間が長くなったり、過密スケジュールが課されたりすることによって、離職するスタッフが多いという課題があります。つまり、コールセンターの人員は入れ替わりが激しい傾向にあります。そのため、コールセンターでの顧客対応におけるノウハウが新たな人員に継承されず、社内にノウハウが蓄積しにくくなっています。これによって、コールセンターは円滑に業務が行われず、さらに人員の増加に頼らざるを得ないという悪循環に陥っているのです。
属人化しやすい
2つ目は、属人化しやすいことです。コールセンターそのものにノウハウが蓄積しにくいため、顧客対応の質はスタッフ個々のスキルに依存します。つまり、コールセンターにおける業務の質は、属人性が非常に高いものになりがちです。そのため、コールセンターとして安定した運営が困難になっていることが、業界全体の大きな課題として挙げられています。
作業効率にばらつきが出る
3つ目は、作業効率にばらつきが出ることです。DXを行っていない場合、顧客対応履歴の管理・データの入力などを人力で行う必要があります。この場合、ヒューマンエラーが起こる可能性が高い上に、人員によって作業効率のばらつきが激しくなる傾向にあります。ミスが起きると顧客から不信感を抱かれる一方で、ミスを防ぐためにコールセンター内で入力したもののダブルチェックを行っていては、本腰を入れるべき顧客対応業務に支障をきたす懸念があります。
コールセンターのDX化で期待できること
コールセンターのDX化で期待できる、以下3つのことについて解説します。
- 顧客体験の向上
- 人手不足の解消
- 業務効率化による業務の最適化
1つずつ、解説します。
顧客体験の向上
コールセンターのDX化で期待できることの1つ目は、顧客体験の向上です。従来では、顧客からの問い合わせは、すべて人力で対応していました。そのため、問い合わせ対応にタイムラグが生まれる上に、企業側は非常に多くの人員が必要でした。
しかし、コールセンターのDX化として、一次対応にチャットボットやIVR(自動音声応答システム)などを導入すれば、顧客がオペレーターの対応を待つ時間が不要になります。顧客からのよくある質問に対して自動で回答を提示できるようすれば、スタッフによる顧客対応を最小限に抑えられます。その上で、一次対応で解決できない問題にのみ人力で対応できれば、疑問に答えられないことによる顧客満足度の低下は防げるでしょう。このようなコールセンターのDX化は、日々顧客からの質問が多いクレジットカード会社や、携帯キャリア会社などで導入されています。
なお、顧客満足度は顧客が必要な情報を問い合わせによって入手できたかどうかによって決まることが多いです。そのため、AHT(顧客処理時間)の短縮により、顧客対応の丁寧さに欠けているという印象は与えません。
関連記事:チャットボットによるナレッジ共有のメリットやデメリット・導入のポイントを徹底解説
人手不足の解消
コールセンターのDX化で期待できることの2つ目は、人手不足の解消です。一次対応だけでなく、顧客対応履歴の管理などの事務処理も自動化することで、必要な人員数を大幅に減らせます。一次対応で利用するチャットボットや自動音声システムは、データが蓄積すると同時に精度を高められるため、DX化して時間が経過するほど一次対応が不要となります。そして、高度な二次対応が可能な人材のみをコールセンターに配置するだけでよくなるので、結果的に人手不足の解消につながるでしょう。
業務効率化による業務の最適化
コールセンターのDX化で期待できることの3つ目は、業務効率化による業務の最適化です。たとえば、音声認識サービスを導入した場合、顧客からの質問を自動でテキスト化できれば、データベースから簡単に質問や検索が可能となります。また、リアルタイムで顧客とオペレーターの会話内容がテキストで保存されることになるため、応対記録を打ち込むことも不要になるでしょう。さらに、漏れなく応対記録を保存できるため、業務の改善なども容易になります。DX化によって、コールセンターにおける業務効率化はもちろんのこと、現状を踏まえた業務の最適化が期待できます。
コールセンターが進めるDXを成功に導くためのデジタル化
コールセンターのDX化を成功に導く、以下3つのデジタル化について解説します。
- コミュニケーション
- プロセス
- 統計
1つずつ、解説します。
コミュニケーション
コールセンターのDX化を成功に導くためにデジタル化すべきことの1つ目は、コミュニケーションについてです。コミュニケーションのデジタル化の代表例は、問い合わせチャネルのデジタル化です。上述したチャットボットやIVR(自動音声応答システム)などを活用し、問い合わせチャネルをデジタル化します。従来の電話対応などは、顧客とコールセンター担当者の時間がそれぞれ失われるため、双方にとって非常に非効率です。コミュニケーションのデジタル化を行うことで、顧客はよりスムーズに情報を獲得でき、コールセンターの業務も円滑に回るようになります。
また、コミュニケーションをデジタル化する一環として、FAQを充実させるのも1つの手段です。FAQを充実させることができれば、顧客の自己解決を促し、実質的な問い合わせ数を減らせます。問い合わせ内容のデータから、よくある質問に対する回答は積極的にFAQに掲載しましょう。
プロセス
コールセンターのDX化を成功に導くためにデジタル化すべきことの2つ目は、プロセスです。業務プロセスやマネジメントをデジタル管理することで、業務効率化を図れます。その上、プロセス全体をデジタルで保存しておけば、人員が入れ替わった際の引き継ぎやナレッジの共有もスムーズになります。日々の業務効率化に加え、人員交代時のトラブルリスクの低減にもつながるのです。
ただし、プロセスのデジタル化は取り組んですぐに完成するものではありません。なぜなら、膨大な業務上のデータを考慮して適切なものを作らなければ、現場が円滑に機能しないからです。とはいえ、現代は業務効率の最大化が求められる傾向にあるため、企業にとっては避けられない課題となっています。まずはデータを収集し、整理することから取り組みましょう。同時並行で、バーチャルリモートデスクトップなどを導入し、勤務場所を柔軟にするなどの検討をおすすめします。
統計
コールセンターのDX化を成功に導くためにデジタル化すべきことの3つ目は、統計です。昨今のマーケティングにおいて、データ分析は行うべきタスクの1つです。コールセンターの顧客対応に関わるデータを蓄積し、自動で分析するシステムを導入することで、コールセンター運営の最適化が容易に行いやすいです。また、データの収集や分析に必要な多くの時間と労力を節約できるため、その分人員を削減したり、本腰を入れるべき顧客対応に人員を回せたりできます。統計に関するツールの導入は積極的に検討しましょう。
関連記事:【2024年版】データ分析ツールのおすすめ10選を徹底比較!メリットや選び方まで詳しく紹介
コールセンターにDXを導入する手順
ここでは、コールセンターにDXを導入する手順について解説します。
- 課題の洗い出し
- プロセスの見直し
- スケジュールを決めて実行する
それでは、1つずつ解説します。
課題の洗い出し
コールセンターにDXを導入する手順の1つ目は、課題の洗い出しです。まずは、現状のコールセンターの状況を振り返って、どのような課題があるのかを洗い出しましょう。課題を洗い出す際は、できるだけ具体的な課題として洗い出すことが大切です。課題の例としては、以下の通りです。
- 顧客対応にかかる時間が長く、顧客に平均5分の保留時間を与えてしまっている
- スタッフによって、顧客対応レベルが異なる
- 顧客との会話データを有効活用できていない
課題を洗い出したら、その課題に優先順位を付けましょう。コールセンターのDX化では、一度に多くの課題を解決しようとすると失敗のリスクが高いため、優先順位の高いものから集中して取り組むことが大切です。
プロセスの見直し
コールセンターにDXを導入する手順の2つ目は、プロセスの見直しです。取り組む課題を明確にしたら、その課題を解決するために、どのように改善する必要があるかを考えましょう。漠然と課題解決を目指すのではなく、どの業務やプロセスを改善することが必要であるかを、明確化することが大切です。コールセンターの業務は主に顧客対応・情報入力などの事務作業・組織マネジメントの3つに分けられます。取り組むと決めた課題がその3つのどれに当てはまるのかを考え、その上で具体的に解決のプロセスを検討すると良いでしょう。
スケジュールを決めて実行する
コールセンターにDXを導入する手順の3つ目は、スケジュールを決めて実行することです。取り組む課題・プロセスを明確にしたら、実際にスケジュールを決めてDXを実行しましょう。具体的には、下記を決定して実行することが大切です。
- 課題を解決するシステムの開発や導入
- システム移行や導入のスケジュール
これらを文章化し、いつでも確認できる状態にしておくと良いでしょう。また、システムなどの導入を行うまでに、導入スケジュールをスタッフに周知させるとともに、オペレーター教育によりスムーズにシステムを導入するための体制を作ることも大切です。
まとめ
本記事では、コールセンターのDX化の必要性とともに、コールセンターでDX化を行う方法について解説しました。コールセンターは、非常に多くの人材が必要である上に、顧客満足度に大きな影響を与えるため、DX化で業務効率化と顧客満足度の向上の両方を狙えます。コールセンターのDX化を進めるためにも、まずは現在のコールセンターが抱える課題の洗い出しから始めてみてはいかがでしょうか。
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