文書管理が重要なことは多くの企業で認識され、多くの企業は全社共通で適用される文書管理のルールを作成したり、文書管理システムを導入して管理を行っています。しかし、実際にはそのルールが効果的に運用されていない企業も見受けられます。また、最近では紙に代わって電子文書が増えており、その管理がうまくできていない、あるいは保存だけして活用ができていない企業も多いようです。そこで、電子文書の管理も含めて、より効果的かつ効率的に文書を管理するためのルールづくりとポイントについて紹介します。
また、電子文書管理の増加を前提として、2015年にはISO9001(品質マネジメントシステム)が改訂されました。コーポレートガバナンスを目的とした文書管理に関しては
・「いまさら聞けない!文書管理の基本事項と押さえておくべきポイント」
・「ISO9001で規定された文書管理の役割と要求事項を分かりやすく解説!」
・「文書管理システムとは?メリットや選び方・おすすめ製品10選を紹介」
の記事を参照してください。
目次
文書管理には全社共通のルールづくりが必要
多くの企業では、全社共通の文書管理に関するルールを策定しています。このルールはなぜ必要なのでしょうか。大きく分けると次の二つの目的を達成するためです。
文書管理ルール策定の目的①:企業を守る
文書管理に関しては法律で保存しなければならない文書や保存期間が定められています。また、企業にとって機密性の高い文書は外部に漏えいしないように守らねばなりません。このために適切な文書管理のルールが必要不可欠です。
文書管理ルール策定の目的②:企業内のナレッジを共有・活用する
製品開発や営業などで得られた情報やナレッジを保存・記録して広く社内で共有して活用するためです。文書管理といっても、「管理」するだけでは不十分で、それらの管理された情報・文書を活用することでより大きな価値を生み出すことができます。そのためにも、共有・活用しやすいシステムやルールの策定が重要なのです。
また、ルールだけではなく、必要な文書を必要と認められた人が、必要なときに、いつでも、どこにいても素早く取り出せる運用の仕組みがなければ目的を達成することはできません。
これらのシステム運用ルールや管理の仕組みが出来上がると、結果として以下の四つの成果を得ることができます。
- 業務の効率化
文書管理システムを導入することで、必要な文書を必要なときに素早く取り出せれば、文書を探す時間や、必要な情報を人に聞く時間を減らせます。また、文書を二次的に活用することで業務時間の削減が可能です。 - 文書の紛失、改ざん、漏えいの防止
文書に閲覧権限を設けたID管理をしたり、閲覧記録のようなシステム上のログを取ることで、文書の紛失、改ざん、漏えいを防止できます。 - 法定保存文書や社内で保存を定めた文書の適切な管理と保存
文書の保存ルールを明確にすることで、ルールに定められた管理・保存ができ、保存漏れや誤廃棄などを防止できます。 - コンプライアンスや品質管理などに対する説明責任への対応
企業活動の記録を文書として記録し、管理することで、コンプライアンス違反や品質問題で訴訟やクレームが生じても根拠を明確に示した説明責任(アカウンタビリティ)を果たせます。
文書管理ルールでは何を決める必要があるのか
文書管理のルール策定では最低限以下の4項目が必要です。
- 文書管理の主体
文書管理のルールが適用される対象範囲のことです。 - 保管・保存する文書の範囲
法律や社内における文書の重要度から保管・保存する文書の範囲のことです。 - 文書の保管・保存方法
文書の利用のために文書の命名方法・ファイリング方法などのことです。 - 保存期間・廃棄方法
文書ごとに保存期間を決め、廃棄する方法を決めることです。
文書管理ルールは5W1Hの「Why」から決める
前述の文書の基本ルールを考えるときには、「文書のライフサイクル」に沿うことと、ここで紹介する「5W1H」で考えると、効率的で漏れのないルールを作成できます。
文書管理のルールを具体的に決める前に重要なことは、「なぜ文書管理に取り組むのか?」「文書管理の目的は何か?」の「Why」をまず明確にすることです。
この「Why」は、部や課などの組織及び役職に与えられたミッションによって異なります。それぞれの観点から考えると有効性の高いルールを決められます。「Why」が決まれば、後は「What」「Where」「When」「How」について文書管理のルールを決めます。
- 「What」は、文書管理の対象とする文書や文書管理のルールを適用する範囲(正社員のみか、全社組織・全階層に適用かなど)を決めます。
- 「Where」は、文書の保管・保存場所を対象文書別・適用範囲別にどこにするのかを決めます。
- 「When」は、文書の保管・保存場所を対象文書別・適用範囲別に「いつ」「いつまで」を「保管」「保存」「廃棄」別に決めます。
- 「How」は、文書の保管・保存場所を対象文書別・適用範囲別に「文書の作成方法」「文書の命名方法」「合議の有無・範囲」「上司の承認の有無・承認者の役職」「保管・保存の具体的方法」「廃棄の方法」などを決めます。
文書管理のルールづくりのポイントは
では、どのようにすれば運用に耐えうるルールやシステムを活用することができるのでしょうか? ポイントは、以下の二つです。
1. 文書の流れの各段階でルールを作成
企業で作成あるいは外部から受け取った文書は、一般的に「発生」→「活用・処理・伝達」→「保管」→「保存」→「廃棄」の流れ(ライフサイクル)をたどります。そのため文書管理のルールは、それぞれの段階で適切な取り扱いができるように作ります。
「保存」と「保管」は同じ意味で使われることもありますが、文書管理では異なる意味で使われます。その違いを理解しておかないと適切な文書管理のルールを作成できません。「保管」とは、よく利用する、あるいは緊急度の高い文書をすぐ使えるように管理することです。「保存」とは、利用はあまりしない文書ですが、法律の定めや企業として重要な文書の場合、その重要性に応じて一定期間、紛失、改ざん、漏えいが起きないように管理することです。
2. 紙文書と電子文書の二つのルールを作成
紙文書に対して電子文書は、データのままでは閲覧できず何らかの処理を行う必要があります。また、記録媒体が劣化や破損すると紙文書と違ってまったく閲覧できなくなるリスクが生じます。
その他にも紙文書とは異なる機密性を確保する対策が必要であったり、紙文書に対して検索が容易な反面、データが大量になるとデータの保存方法によっては、検索性が悪くなってしまったりする可能性があります。これらの違いにより電子文書と紙文書は同じルールでは適切な文書管理ができません。それぞれにルールを作成したり、システムによる制約や機能の活用が必要になります。
関連記事:社内資料の更新履歴を適切に管理する重要性と、運用時のポイント
電子文書の文書管理を効率的に行うには
紙文書とは異なる電子文書の管理ポイント
文書管理は紙文書であっても電子文書であっても基本的な管理ルールは共通です。しかし、電子文書は紙文書とは異なる点も多いため、電子文書を管理するときのポイントを知っておかないと有効な文書管理ができません。電子文書は、紙文書と比較して以下の特徴があります。
- いつでも、どこからでもアクセスしやすい
- コピーをしやすい(文書のバックアップ)
- 場所を取らずに保管・保存ができる
- 保管・保存できる寿命が短い
- 再現性をなくした完全な廃棄には一定の専門知識が必要である
電子文書の管理には以上のポイントについて紙文書とは異なった管理ルールが必要です。文書管理の目的のひとつである社内の情報やナレッジを活用するうえでは、上記のポイントをふまえた文書管理システムの選定とルール策定が欠かせません。電子文書の管理ルールをしっかり定めることで業務の効率化ができたり説明責任を果たせたりするなど企業経営に大きな成果をもたらすことが可能です。
文書管理システムにも様々なツールがあり、各々特徴的な機能があります。文書管理システムの選定ポイントは、以下の記事もご参照ください。
『【2024年版】文書管理システムおすすめ10選を徹底比較!(フリーあり)』
電子文書の管理はクラウドベースの文書管理システム導入がおすすめ
電子文書の急増や人手不足によって業務の効率化や生産性の向上の必要性が増している今日では、クラウドベースの文書管理システムの導入は大きな経営上の効果を生み出します。具体的には以下の四つのメリットです。
1.業務効率化と生産性の向上
ナレッジの共有化、ワークフローのシステム化、検索性の向上による書類の発見時間の短縮、いつでも、どこにいても文書を確認できるなどで業務効率化や生産性を向上させられます。
2.情報の紛失・改ざん・漏えいなどへのリスク対策の強化
豊富なアクセス権限機能によりセキュリティが強化されます。
3.顧客満足度の向上
顧客対応時に正確な情報を短時間に提供できる、またクレームなどに対して明確な説明責任が果たせるなど顧客満足度を高める対応が可能です。
4.文書のバージョン管理や保管・保存期限や更新日の管理が容易
日々、刻々と変わる情報社会では、どの情報が最新かの確認をする必要がありますが、こうした情報のバージョン管理や情報の変更などの履歴を簡単に確認できます。また、文書の保管・保存期限の管理が容易になることで、文書の「発生」→「活用・処理・伝達」→「保管」→「保存」→「廃棄」の一連の流れ(ライフサイクル)を一括して管理できます。
まとめ:文書管理には全社共通のルールを作成するだけでなく実行することが必要
多くの企業で文書管理の規定が定められていますが、すべての規定が正しく守られているところは多くありません。規定やルールは作成するだけでなく、正しく運用されることが重要です。
紙の文書から電子文書に文書のウェイトが移行した今日においては、文書管理システムの導入をおすすめします。文書管理システムの選定のポイントやさまざまなツールの比較は以下の記事にまとめてありますのでご一読ください。
【2024年版】文書管理システムおすすめ10選を徹底比較!(フリーあり)
NotePM(ノートピーエム) は、Webで簡単にマニュアル作成できて、強力な検索機能でほしい情報をすぐに見つけられるサービスです。さまざまな業界業種に導入されている人気サービスで、大手IT製品レビューサイトでは、とくに『使いやすいさ・導入しやすさ』を高く評価されています。
NotePMの特徴
- マニュアル作成、バージョン管理、社外メンバー共有
- 強力な検索機能。PDFやExcelの中身も全文検索
- 社内FAQ・質問箱・社内ポータルとしても活用できる
- 銀行、大学も導入している高度なセキュリティ。安全に情報共有できる
URL: https://notepm.jp/