社員が個々に持つ知識やノウハウを、組織内で十分に活用するには、ナレッジマネジメントの実施が大切です。しかし、ナレッジマネジメントが何かを詳しく把握していない人もいるかもしれません。
本記事では、ナレッジマネジメントの概要や実施するメリット、具体的な実施手順などを解説します。社内のノウハウを整理したい人は、ぜひ最後まで確認してください。
目次
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、各社員が持つ知識や経験を組織全体で共有することです。業務のノウハウを各々が持つのではなく、組織の知的資産として活用できる状態を目指します。
かつての日本の企業は、終身雇用制度により社員が一つの企業に長く在籍することが多かったため、退職によるノウハウの流出は多くありませんでした。しかし、現代は終身雇用制度が崩壊しつつあり、従業員が退職するケースが多くなっていることでノウハウが流出するリスクも増えています。
あらかじめナレッジマネジメントで知識を共有することで、ノウハウが流出する可能性を抑えられます。
ナレッジの種類
ナレッジマネジメントで扱うナレッジは「暗黙知」と「形式知」の2つに分かれます。
| 暗黙知 | 個人の経験や勘に基づいた知識であり、他人に言語化して伝えるのが難しい |
| 形式知 | 多人数で共有できるように、マニュアルで明文化された知識 |
ナレッジマネジメントでは、暗黙知を形式知に変換し、組織全体で共有できる状態が必要です。
ナレッジマネジメントを実施するメリット
ここからは、ナレッジマネジメントを実施するメリットとして、以下の3つを解説します。
- 新入社員の育成を効率化できる
- ナレッジの属人化を防止できる
- 企業の競争力を強化できる
メリットを理解することで、ナレッジマネジメントを実際に導入するかどうか考えやすくなります。ナレッジマネジメントに興味がある人は、一度確認しておきましょう。
新入社員の育成を効率化できる
ナレッジマネジメントにより、業務マニュアルや過去の成功事例などを蓄積することで、新入社員は必要な情報を自ら探して自己学習を進められます。結果として、教育担当者の負担が軽減され、研修の効率化を期待できます。
不明点を自分で検索する習慣をつけてもらうことで、研修期間後の質問対応に関する手間を削減しやすくなる点もポイントです。
ナレッジの属人化を防止できる
ナレッジの属人化とは、業務ノウハウが特定の個人に集中する状態です。ナレッジの属人化が起きると、特定の社員が退職・休職した場合に業務が停滞する可能性が高くなります。
ナレッジマネジメントによって、特定の社員の知識を社内で共有できれば、担当者が不在でもほかの社員が業務を引き継ぎやすくなります。業務の引き継ぎができれば、事業が停滞するリスクの低減が可能です。
企業の競争力を強化できる
ナレッジマネジメントを通じて、成功事例や顧客の声などを全社で共有することで、各社員が提供するサービスを向上させやすくなります。また、ある部署の知見がほかの部署の新事業に活かされると、売上を一気に伸ばすチャンスになり得ます。
ナレッジマネジメントによって、社員全員があらゆる知識を確認できる状態になることで、企業の生産性の底上げが可能です。生産性の向上により自社の競争力が強化され、長年にわたって生き残りやすくなります。
ナレッジマネジメントの4つのタイプ
ここからは、ナレッジマネジメントの4つのタイプとして、以下を紹介します。
- ベストプラクティス共有型
- 専門知識ネットワーク型
- 顧客知識共有型
- 知的資本集約型
各タイプの詳細を確認することで、自社に最適なナレッジマネジメントの形を見つけやすくなります。ナレッジマネジメントの導入を検討している人は、ぜひ確認してください。
ベストプラクティス共有型
ベストプラクティス共有型とは、社内の優れた業務プロセスや成功事例を共有する手法です。たとえば、トップセールスの商談手法をマニュアル化して展開したり、効率的な開発コードをテンプレート化して共有したりする取り組みが該当します。
ベストプラクティス共有型を実践することで、どの社員も一定水準以上のサービスを提供できるようになり、自社が提供する価値を向上できます。業務品質の向上が課題となっている企業や、拠点間で業務レベルに差がある場合に有効な手法です。
専門知識ネットワーク型
専門知識ネットワーク型は、特定の社員や部署が保有している専門知識を、ほかの社員が確認できるようにする手法です。専門的な知識が必要な課題に対して、すべての社員が対応できる体制を整えられます。専門知識を持つ社員と連絡を取れる社内SNSを構築したり、社内wikiで専門知識を集約したりすることで実現できます。
研究開発部門やコンサルティング事業など、高度な専門知識を持つ人材が多数在籍する組織で、特に効果を発揮しやすいです。
顧客知識共有型
顧客知識共有型とは、顧客からの問い合わせ履歴やクレーム、要望などを一元管理する手法を指します。顧客の声を製品開発やサービス改善に活かし、顧客満足度を向上させることが目的です。
顧客からの要望を集めるには、アンケートやインタビューなどを実施するのが効果的です。集めた情報は、CRM(顧客関係管理)システムを導入することで管理しやすくなります。顧客との接点が多いBtoC企業や、クライアントとの関係性が重要なシステム開発会社などで効果的な手法です。
知的資本集約型
知的資本集約型とは、企業が保有する特許や技術ノウハウなど、より経済的価値に変換しやすいナレッジを整理する手法です。他社に売るためにノウハウを整理する取り組みも、知的資本集約型のナレッジマネジメントに分類されます。
知的資本集約型のナレッジマネジメントを実施することで、新たなビジネスチャンスの創出を狙えます。技術開発力やブランド価値を大事にする、製造業やIT企業などで採用されやすいです。
ナレッジマネジメントを実施する手順
ナレッジマネジメントは、以下の4つの手順で実施できます。
- 目的を明確にする
- 共有したいナレッジを洗い出す
- ナレッジマネジメントの実施方法を決める
- 定期的に効果測定を行う
ここからは、それぞれの手順の詳細な作業を解説します。各手順の作業を把握することで、ナレッジマネジメントの導入における失敗のリスクを減らせます。ナレッジマネジメントの実施を考えている人は、ぜひ確認してください。
手順1:目的を明確にする
目的が曖昧なままナレッジマネジメントを実施しようとしても、施策の方向性がぶれたり、ほかの社員の協力が得られなかったりします。ナレッジマネジメントを実施する前に、目的を明確にしましょう。「開発プロジェクトの手戻りを20%削減する」というように、自社の経営課題に直結する具体的な目標を掲げると効果的です。
設定した目的を経営層から現場まで共有できれば、全員がナレッジマネジメントの導入に協力してくれる可能性が高まります。
手順2:共有したいナレッジを洗い出す
ナレッジマネジメントを始める際に、あらゆる情報を闇雲に集めようとすると、かえって重要な情報が埋もれてしまう可能性があります。ナレッジマネジメントの目的が明確になったら、どういったナレッジを集約するか考えましょう。
たとえば「開発プロジェクトの手戻り削減」が目的なら、以下のナレッジを集約すると効果的です。
- 開発プロジェクトの大まかな実施手順
- プログラミングにおけるコーディング規約
- 過去に起きたシステム障害をまとめた報告書
集約するナレッジが決まったら、それぞれの知識を誰が持っているかも整理し、収集計画を立てましょう。
手順3:ナレッジマネジメントの実施方法を決める
共有したいナレッジの洗い出しが終わったら、具体的なナレッジマネジメントの実施方法を考えます。ナレッジマネジメントの実施方法の例として、下記が挙げられます。
- 企業内SNSにナレッジを集約する
- 定期的に勉強会を開催する
- ナレッジマネジメントツールを利用する
ナレッジマネジメントツールとは、ナレッジの集約をスムーズにしてくれるITツールです。ツールにはさまざまな種類があるため、利用する場合は何を導入するかも考えておきましょう。
手順4:定期的に効果測定を行う
ナレッジマネジメントの実施方法が決まり、実際に導入した後は、導入後の効果測定を実施します。
具体的には、ツールの利用履歴や業務効率に関するアンケートなどをもとに、当初の目的に貢献しているかを評価してみましょう。目的の達成に貢献できていない場合は、ツールの運用ルールを緩めたり、ナレッジマネジメントの促進を呼びかけたりして対応します。
効果測定を行い、改善策を施すことで効果的なナレッジマネジメントにつながります。導入だけで満足するのではなく、効果測定も怠らないようにしましょう。
ナレッジマネジメントを成功させる3つのポイント
ここからは、ナレッジマネジメントを成功させるポイントとして、以下の3つを解説します。
- SECIモデルを意識する
- スモールスタートで経験を積む
- ナレッジの共有を評価制度と結びつける
ポイントを理解することで、ナレッジマネジメントをより効果的に実施できるため、ぜひ確認しておきましょう。
SECIモデルを意識する
SECI(セキ)モデルとは、暗黙知を形式知に変換し、新たな知識を創造するプロセスを4つにわけたフレームワークです。それぞれのプロセスと詳細は以下の通りです。
| プロセス | 詳細 |
|---|---|
| 共同化(Socialization) | OJTや雑談などを通じて、暗黙知を伝達するプロセス。 |
| 表出化(Externalization) | マニュアルや日報の作成を通じて、暗黙知を形式知に変換するプロセス。 |
| 連結化(Combination) | 複数の形式知を組み合わせて、新たな知識体系を作るプロセス。
例として、各人が作成したマニュアルをつなぎ合わせて、より良いドキュメントに仕上げる取り組みが該当する。 |
| 内面化(Internalization) | 連結化を通して完成した形式知を、実際に業務で実践し、個人の暗黙知として定着させるプロセス。 |
ナレッジマネジメントにおいては、情報を何となく蓄積するのではなく、各プロセスをどのように実践するかを考えることが大切です。SECIモデルを意識することで、社員により確実にナレッジが浸透します。
スモールスタートで経験を積む
スモールスタートとは、小さな規模からプロジェクトを始めることです。ナレッジマネジメントもスモールスタートが大切で、いきなり全社展開しようとすると、想定外の問題に対応しきれなくなる可能性があります。
「まずは一部の部署でFAQを導入する」という風に、対象範囲とナレッジマネジメントの内容を限定して試行してみましょう。スモールスタートで得た運用ノウハウを活かし、ほかの部署へ展開すると、よりスムーズに導入できます。
ナレッジの共有を評価制度と結びつける
ナレッジマネジメントを定着させるには、社員への動機付けが不可欠です。「情報を提供しても自分にメリットがない」と感じる社員が多いと、ナレッジマネジメントはなかなか浸透しません。
動機付けの例として、ナレッジの提供や活用を人事評価の項目に加えるのは有効です。「ナレッジの登録数に応じてポイントが付与される」という風に、知識の提供が評価される仕組みがあれば、社員は積極的にノウハウの共有に取り組みやすくなります。
ナレッジマネジメントを簡単に行う方法
ナレッジマネジメントを簡単に行うには「ナレッジマネジメントツール」の導入がおすすめです。ナレッジマネジメントツールを使うことで、ツール内でナレッジを登録したり、保管したりできます。マニュアルの作成や検索をスムーズにできるものが多いため、ナレッジマネジメントにかける工数を少なくできます。
おすすめのナレッジマネジメントツール3選
ここからは、ナレッジマネジメントツールとして、以下の3つを紹介します。
- NotePM
- Qast
- SharePoint
ツールを使ってナレッジマネジメントを実施したいと考えている人は、ぜひそれぞれの詳細を確認してください。
NotePM
NotePMは、マニュアルの検索性の高さが特徴的なナレッジマネジメントツールです。
ツール内でマニュアルを作成し、フォルダごとに管理することで、ナレッジの保管場所をわかりやすくできます。マニュアルの全文検索にも対応しており、タイトルだけでなく本文中まで一致するキーワードがないか探してくれるため、欲しい情報をすぐ見つけられる点も魅力です。
マニュアルを作る際は、Wordと似たようなUIのテキストエディタを使用できるため、パソコン操作が苦手な社員も気軽にナレッジマネジメントへ参加できます。
Qast

出典:Qast|AIナレッジプラットフォーム|AI × 社内のナレッジで、みんなの業務が動き出す。
Qastは、Q&Aの機能を通じてナレッジマネジメントを実現できるツールです。Q&Aの機能とは、業務について質問すると、ほかの社員が回答を投稿してくれる「社内版知恵袋」です。社員同士の質問や回答を通じて知識を蓄積することで、自然とナレッジマネジメントを実践できます。
また、AIが設定した質問に音声で答えるだけでマニュアルが完成する「AIナレッジインタビュー」も特徴的です。さまざまな機能をフル活用することで、ナレッジマネジメントを効率化できます。
SharePoint
SharePointは、Microsoftが提供するナレッジマネジメントツールです。マニュアルをはじめとするドキュメントを作成し、SharePoint内で一元管理できます。また、プロジェクトの進捗管理やリソースの共有など、タスク管理業務も実施可能です。
オウンドメディアのような見た目のページを作成することで、社内のイベントや業務に関するお知らせを周知できます。職場のコミュニケーションの活性化にも役立つナレッジマネジメントツールです。
ナレッジマネジメントツール「NotePM」の導入事例
ここからは、ナレッジマネジメントツールの「NotePM」を導入した事例として、以下の3つを紹介します。
- 株式会社ラクス
- 株式会社相鉄ホテルマネジメント
- 株式会社47CLUB
それぞれの導入事例を確認することで、NotePMを導入するメリットをより詳しく把握できます。NotePMに興味がある人はぜひ確認してください。
株式会社ラクス

株式会社ラクスは、IT技術を活用した事業支援を行っている企業です。会社が急成長して社員が増えるなかで、ナレッジが散在しているため、業務の標準化が難しいという課題を抱えていました。
NotePMを導入し、ツール内でフォルダごとにナレッジをまとめたことで、社内情報の一元化に成功しました。個々人がナレッジを探す癖がついたことで、業務の引き継ぎコストがおよそ50%削減された点も大きな変化です。
【導入事例】検索時間が4割削減!急成長SaaSが実践するナレッジ共有を浸透させるための取り組みとは – 株式会社ラクス
株式会社相鉄ホテルマネジメント

株式会社相鉄ホテルマネジメントは、「相鉄フレッサイン」や「ホテルサンルート」などのホテルブランドを運営している企業です。数多くのホテル間でナレッジを共有できるように、NotePMを導入しました。
NotePMの導入後は、各部署からすぐにナレッジを発信できる環境が整い、すべての社員が簡単に専門知識を得られるようになりました。レポート機能を使うことで、スタッフのナレッジの閲覧率を確認できる点も重宝されています。
【導入事例】 ナレッジ共有で新たなサポート体制を構築 – 株式会社相鉄ホテルマネジメント
株式会社47CLUB

株式会社47CLUBは、日本全国の商品に対するプロモーション活動を実施している企業です。以前はメールで社内情報を共有していましたが、心理的なハードルが高いため、より気軽にナレッジを周知できるようにNotePMを導入しました。
NotePMを導入することで、以前よりナレッジの共有が活発になりました。日報もNotePMで管理するようになり、コメント機能で感想を送れることで、社内のコミュニケーションが活性化した点も大きな変化です。
【導入事例】社内のナレッジを蓄積する場を構築。日報を通じて社内コミュニケーションが活発に!- 株式会社47CLUB
ナレッジマネジメントで自社の生産性を向上させよう
本記事では、ナレッジマネジメントの概要や実施するメリット、具体的な実施手順などを解説しました。
ナレッジマネジメントは、社員の暗黙知を組織の形式知に変えることで、人材育成の効率化や競争力の強化につなげる取り組みです。目的を明確化したり、定期的な効果測定を行ったりすることで、大きな効果が期待できます。
ナレッジマネジメントは、専用のツールを使うとより効率良く実施できます。ナレッジマネジメントツールに興味がある人は、ノウハウの検索性に優れている「NotePM」をぜひ検討してください。




