スキルマップは、従業員やチームがもつスキルを可視化し、どのスキルを強化すべきかを明確にするためのツールです。スキルマップを導入することで、従業員の強みを活かした人員配置ができるようになります。
一方「作成するのが難しい」「どんなスキルを記載すればいいのかわからない」など、スキルマップの作成に課題を抱える方も多いのではないでしょうか。自社に合ったスキルマップを効率的に作成するには、テンプレートの活用がおすすめです。
本記事では、無料で使えるExcel版スキルマップのテンプレートや各職種に応じた項目例を紹介します。スキルマップの作り方も解説するので、自社に合ったスキルマップを作成したい方は、ぜひ最後までお読みください。
Web上で簡単にスキルマップの作成・管理を行えるツール「NotePM」
目次
【Excel版】スキルマップのテンプレートを無料配布
ここでは、Excelで使えるスキルマップのテンプレートを無料で配布します。ダウンロード後、コピーしてすぐに利用可能です。ぜひご活用ください。
以下のテンプレートは基本型のため、自社の使い方に合わせて項目をカスタマイズすることをおすすめします。たとえば、スキルレベルを数字ではなく◯×にする、業務内容の項目を増やすなど、柔軟に変更してみてください。
オリジナルのテンプレートに加えて、各種機関が配布するスキルマップもあわせて紹介します。
- 他業種対応|厚生労働省「キャリアマップ・職業能力評価シート」
- エンジニア向け|IPA「ITスキル標準(ITSS)」
多業種対応|厚生労働省「キャリアマップ・職業能力評価シート」
厚生労働省が配布する「キャリアマップ・職業能力評価シート」は、多業種に対応しており、レベル別・職種別と種類が豊富な点が魅力です。
職業能力評価シートはExcelで無料ダウンロードでき、自社に合わせてカスタマイズできます。キャリアマップで従業員の成長プロセスを可視化し、職業能力評価シートで実務に落とし込むと、人材育成の体制が整うでしょう。
エンジニア向け|IPA「ITスキル標準(ITSS)」
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が公開する「ITスキル標準(ITSS)」は、主にエンジニアを含むIT人材向けのスキルマップです。経済産業省が策定・公表しており、IT人材の教育指標として活用できるでしょう。
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【職種別】スキルマップのテンプレートと項目例
ここでは、スキルマップの基本型を職種別に見ていきましょう。
- 技術職(製造業)
- 技術職(IT業界)
- 事務職
- 営業職
各職種で紹介するテンプレートには、スキルの項目例をいくつかピックアップして掲載しています。スキルの項目を選定する際の参考にしてみてください。
技術職(製造業)
業務内容 | スキル項目 | 従業員A | 従業員B | 従業員C | 従業員D |
---|---|---|---|---|---|
機械操作 | 製造機械の操作 | ||||
安全プロトコルの遵守 | |||||
品質管理 | 品質チェック | ||||
精密測定スキル | |||||
メンテナンス | 定期点検スキル | ||||
機械修理スキル | |||||
プロセス改善 | 作業改善提案スキル | ||||
原材料管理とコスト意識 | |||||
安全教育 | 安全教育の実施スキル | ||||
チームワークと協調性 |
製造業の技術職は、現場での作業が主な仕事です。スキルマップには、作業を細かく洗い出して書き出し、漏れがないようにするとよいでしょう。業務内容を詳しく設定することで、従業員が作業の全体像を把握できるようになりますし、教育が進めやすくなります。
技術職(IT業界)
業務内容 | スキル項目 | 従業員A | 従業員B | 従業員C | 従業員D |
---|---|---|---|---|---|
ソフトウェア開発 | コーディングスキル | ||||
アーキテクチャ設計 | |||||
データベース管理 | データベース設計 | ||||
SQLスキル | |||||
インフラ管理 | ネットワーク構築・管理 | ||||
クラウドサービス利用 | |||||
セキュリティ | 脆弱性診断 | ||||
データ保護(暗号化とアクセス管理) | |||||
プロジェクト管理 | チームコミュニケーション | ||||
タスクの優先順位付け |
IT業界の技術職には、エンジニアやプログラマーなどが挙げられます。システム開発の基礎となるプログラミングのスキルはもちろん、管理職へのステップアップとしてプロジェクト管理スキルも入れておくことをおすすめします。
事務職
業務内容 | スキル項目 | 従業員A | 従業員B | 従業員C | 従業員D |
---|---|---|---|---|---|
書類作成 | 文書作成スキル | ||||
データ入力 | |||||
コミュニケーション | ビジネスメール対応 | ||||
電話応対スキル | |||||
タスク管理 | スケジュール管理 | ||||
タスクの優先順位付け | |||||
データ処理 | Excelスキル | ||||
基礎的なデータ分析 | |||||
備品管理 | 在庫・発注管理 | ||||
経費精算 | 経費処理 |
事務職の基本業務である書類作成スキルやタスク管理能力、データ処理スキルはスキルマップに落とし込んでおきたい項目です。そのほかのスキルは、現場の業務に応じて適宜追加するとよいでしょう。
営業職
業務内容 | スキル項目 | 従業員A | 従業員B | 従業員C | 従業員D |
---|---|---|---|---|---|
顧客対応 | 顧客対応スキル | ||||
プレゼンテーションスキル | |||||
交渉・契約 | 交渉スキル | ||||
契約書の作成・確認スキル | |||||
顧客管理 | 顧客情報管理 | ||||
リレーション構築 | |||||
市場分析 | 分析スキル | ||||
業界知識 | |||||
自己管理 | タイムマネジメント | ||||
ストレス管理 |
営業職で必要なスキルとして、コミュニケーションスキルや交渉スキル、自己管理スキルなどが挙げられます。顧客とのやりとりが業務の中心となるため、伸ばすべきスキルといえるでしょう。
スキルマップとは?概要や作成目的を解説
スキルマップとは、従業員やチームメンバーがもつスキルを一覧で可視化し、どの能力を強化するべきかを明確にするツールです。通常、縦軸に必要なスキルや能力項目社員名や役職、横軸に社員名や役職を記載し、各スキルの習熟度を評価する形で作成します。
スキルマップの作成目的は、主に人材育成や適切な人材配置ができるようになることです。組織が目指すスキルレベルと個々のスキルとのギャップが可視化されることで、誰にどのトレーニングをするべきかが明確になり、教育プランを立てやすくなります。
スキルマップは、従業員の成長を促しつつ、組織全体の競争力を高める重要なツールとして多くの企業で活用されているのです。
ISO9001・ISO14001の力量管理で必須のツール
ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)において、従業員の力量管理は欠かせない要件です。これらの国際規格では、企業が提供する製品やサービスの品質、環境管理を向上させるために、従業員が要件に沿った知識・スキルをもっているかを証明しなければなりません。スキルマップは、従業員の能力を明確に管理するための有効なツールとして位置付けられています。
スキルマップを活用することで、各従業員の能力や経験を具体的に把握し、ISOの基準に沿った適切な教育を計画・実施できるようになるでしょう。
スキルマップ活用事例|トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社では「多能工化」を進めており、スキルマップを活用してきました。多能工とは、ひとりで複数の仕事ができる作業者のことで、元トヨタ自動車工業副社長である大野耐一氏によって生み出された概念です。
多能工が多くなれば、現場の状況に応じた人員配置が可能になります。製造業で生産性向上を実現できる方法として普及しました。多能工化を進めるには、各従業員のスキルを把握する必要があり、スキルマップが必要不可欠なのです。
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スキルマップ導入のメリット
スキルマップを導入するメリットは、主に以下の4つです。
- 人材育成の質が高まる
- 公平な人事評価が可能になる
- 適切な人材配置が行える
- 業務の効率化・標準化を実現できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人材育成の質が高まる
スキルマップを活用すると、各従業員のスキルレベルや成長の方向性を明確に把握しやすくなります。その結果、人材育成の質が高まるでしょう。
従業員ごとのスキルギャップを特定し、それに基づいたトレーニングや研修プログラムを計画することで、無駄なく効率的に教育を進められます。継続的にスキルマップを更新すれば、社員の成長プロセスを可視化でき、長期的なキャリア開発にも貢献するでしょう。
公平な人事評価が可能になる
スキルマップは、各従業員のスキルやパフォーマンスを数値化・可視化できるツールです。そのため、評価基準が明確になり公平な人事評価ができるメリットがあります。
従業員側も評価基準を把握することで、どのスキルを伸ばすべきか自分で判断できるようになります。自身の成長が評価に直結するとなると、労働に対するモチベーションの向上も期待できるでしょう。
適切な人材配置が行える
スキルマップを活用すると、各従業員の強みや専門性を正確に把握でき、適切な人材配置が行えるようになります。たとえば、特定のスキルセットをもつ人材を専門性が発揮できるプロジェクトに配置することで、チーム全体のパフォーマンス向上につながるかもしれません。
個人で見るとスキルが不足している項目があるとしても、ある人がその分野で専門性を発揮できれば、強みと弱みを補い合う組織になるでしょう。結果として、組織で発揮できるパフォーマンスの向上につながります。
業務の効率化・標準化を実現できる
スキルマップは、業務の効率化や標準化ができる点でもメリットがあります。スキルマップでは、特定の業務に必要なスキルや手順を一覧で可視化します。全社員が同じ基準で業務を遂行できるようになれば、組織全体のスキルレベルを底上げできるでしょう。
さらに、スキルマップによって各従業員のスキルレベルが把握できると、強みや弱みに合わせて適切な業務配分が可能になり、無駄のない効率的な業務運営につながります。業務の質を均一化しつつ、全体のパフォーマンスを最適化できる点でスキルマップの活用は有効なのです。
>関連記事:業務の標準化ってなに?進め方を10ステップで徹底解説
スキルマップ導入のデメリット
スキルマップの導入にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 作成・管理に時間がかかる
- 導入後の効果測定が難しい
スキルマップを効果的に運用するには、導入前にデメリットを把握しておくことが重要です。それぞれ順番に見ていきましょう。
作成・管理に時間がかかる
スキルマップを導入する場合、運用前の準備と導入後の管理に時間を要します。たとえば、従業員一人ひとりのスキルを細かく把握するには、定期的なスキルチェックが必要不可欠です。これまでの人事評価に加えて、新たなプロセスが増える点は注意が必要でしょう。
ほかにも、新しい従業員が入社したときの対応やスキルマップの定期的な更新など、都度手間が発生する点は導入前に念頭においておく必要があります。スキルマップを効率的に運用するには、適切なツールで作成・管理するのがおすすめです。
マニュアル作成・ナレッジ管理ツール『NotePM』なら、簡単にシートを作成・管理できます。業務マニュアルも一元管理できるので、スキルマップと紐づければ教育もスムーズに行えるでしょう。使用感を確かめたい方は、ぜひ30日間の無料トライアルでお試しください。
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>関連記事:NotePMの評判まとめ|メリット・デメリットや料金など網羅的に解説
導入後の効果測定が難しい
スキルマップは、導入後の効果測定が難しい点もデメリットとして挙げられます。スキルマップ自体が成果を直接生み出すものではないからです。スキル向上や適切な人員配置の結果、どんな成果が得られるのか、導入直後に効果を実感しにくい点は注意が必要です。
スキルマップの導入が業績向上にどのように貢献しているのかを定量的に把握するには、
指標を定めて定期的に観測するといった工夫が欠かせないでしょう。たとえば「生産性分析に用いる指標」を参考に導入後の効果測定を行うと、効果測定がしやすくなるかもしれません。
>関連記事:生産性分析に用いる指標一覧|生産性の計算式や改善方法も紹介
スキルマップの作り方6ステップ
スキルマップを作成する手順は、以下の6ステップで構成されています。
- スキルマップ作成の目的を明確にする
- 習得するべきスキルを洗い出す
- 評価者と評価方法を決定する
- スキルの評価基準を定める
- スキルマップを作成・導入する
- 定期的にスキルマップを更新する
それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。
スキルマップ作成の目的を明確にする
スキルマップの導入にはメリットがある一方で、導入する目的が曖昧だとうまく運用できない可能性もあります。
たとえば、社員のスキルギャップを特定して研修計画を立てる、公平な人事評価を行うために使用するなど、スキルマップ作成の目的を具体的に掲げてみましょう。組織のニーズに応じた目的を明確にすることが重要です。
習得するべきスキルを洗い出す
各職種や役職に求められるスキルを具体的に洗い出し、そのスキルがどの程度のレベルで必要かも明確にすると項目に落とし込みやすいです。
技術スキルやソフトスキルなど、幅広い能力を網羅的に洗い出すことで、従業員の多様な成長を促すスキルマップが作成できるでしょう。
評価者と評価方法を決定する
スキルマップを運用する際は、誰がどのようにスキルを評価するのかを決めます。上司やマネージャーによる評価だけでなく、自己評価や同僚による評価を取り入れることで、多角的な視点でスキルを把握できるためです。
評価の透明性を確保するためにも、評価者を明確にし、評価のプロセスが公正であることを従業員に示しましょう。
スキルの評価基準を定める
評価基準は明確で、従業員がどのスキルレベルに達しているかがわかりやすいものでなければなりません。たとえば、以下のような基準を設けると、スキルレベルが可視化されやすくなります。
- 1〜5段階のスコアリング
- 初級・中級・上級といったカテゴリ分け
- ◯✕を活用してスキル習得の有無を区別
このように基準を設定することで、従業員の成長状況が定量的に把握できるようになります。
スキルマップを作成・導入する
ここまでのステップが完了したら、洗い出したスキルと評価基準をスキルマップに落とし込みシートを作成します。スキルマップは、見やすく管理しやすい形式にすることが重要です。Excelやドキュメント作成ツールなどを使って作成してみてください。
本記事内で配布したスキルマップのように、スキルと従業員を一覧で把握できるシートを作成しましょう。導入後は、各従業員のスキルが適切に評価されるよう定期的にチェックを行います。
定期的にスキルマップを更新する
スキルマップは一度作成して終わりではなく、継続的に更新する必要があります。業務内容や必要なスキルは状況に応じて変わるため、定期的にスキルマップを見直し、適切なタイミングで修正・更新を行いましょう。
社員のスキル向上や新しいスキルの習得状況を反映することで、より効果的なスキル管理ツールとして活用できるようになります。
テンプレートを活用して自社に合ったスキルマップを作成しよう
スキルマップはテンプレートを活用し、自社に合うよう効率的に作成するのがおすすめです。本記事で紹介したExcel版のテンプレートは、ダウンロードして簡単にカスタマイズできるので、効率良く作成できるでしょう。
スキルマップをうまく運用したい場合、シートの作成に加えて運用体制の構築が欠かせません。定期的なスキルチェックや内容の更新など、柔軟に操作できるツールを導入すると、作成・管理がスムーズになるでしょう、
スキルマップの作成・運用を効率化したい方には、マニュアル作成・ナレッジ管理ツール『NotePM』がおすすめです。NotePMでは、30日間無料でお試しできる期間を設けています。スキルマップを含むドキュメントの作成・管理を効率化したい方は、選択肢のひとつとしてツールの導入を検討してみてください。
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