システム開発を依頼するならば知っておきたいソフトウェア保守契約について

2024年10月17日(木) 情シス

システム開発を外注した際に話題に挙がるのが「ソフトウェア保守契約」です。多くの場合、年間で保守費用を払うのではないでしょうか。

この保守費用を何となく必要そうだから払っているというケースはとても多く、その内容を適切に把握していない方も多いかと思います。そこでこの記事では、このソフトウェア保守契約について解説します。

ソフトウェア保守契約がなぜ必要なのか

もしソフトウェア保守契約が不要になるとしたら、納品された時点ですべてが完璧に動作し、そのまま維持され続ける場合に限られるでしょう。しかし、ソフトウェアはそうそう完璧ではありません。運用していく中で、予期しなかった問題が起きることが多々あります。

OSやシステムのバージョンが古くなる

例えばWindowsなどのOS上で動作しているソフトウェアにおいて、OSのバージョンアップによって動作しなくなることはよくあります。また、プログラミング言語やデータベースについても同様です。だからといってバージョンアップをしない場合には、セキュリティリスクが高くなるでしょう。バージョンアップを怠ったために、セキュリティインシデントが発生すれば、大きな事業損失につながる可能性があります。

そうしたバージョンアップを行っても問題がないか、またはバージョンアップによって動作不良が発生した場合に対応することが契約上盛り込まれているのが一般的です。ただし最近ではメジャーアップデート(Windows 10から11など)においては保証されないケースもありますので注意してください。

稼働年数が長い場合

多くのシステムでは、納品後1年などの間においては瑕疵担保責任の範囲で無償対応します。なお、これは2017年の民法改正によって「欠陥を把握してから1年以内」とされています。

ただし、システムの多くは多数の機能があり、検収時にすべて確認できる訳ではありません。特殊な操作を行った場合だけ、エラーになることもあるでしょう。そうした際に保守契約を結んでおくことで、中長期的な不具合対応などにも対応できます。

ハードウェアリソースの問題

利用していく中でデータベースのストレージが逼迫したり、リソース不足に陥ることは多々あります。そうした時にハードウェアの入れ替えなどを自分たちで行った場合、保守契約の範囲外になります。ベンダー側の保証する動作環境ではなくなるため、万一のことがあっても保証されません。

保守契約があることで、ハードウェアの故障やグレードアップなどにも対応してくれます。なお、ハードウェアもベンダーの保証範囲に含まれる場合になるので注意してください(持ち込み機器では難しいでしょう)。

サポート

ソフトウェアの操作に関するサポートや質問は保守契約に含まれます。ヘルプドキュメントを見れば分かる場合もあれば、詳細を聞かないと分からない場合もあるでしょう。実際の運用中においては、後者のケースがずっと多いはずです。

保守契約を結んでいない場合にはサポートも限定的になります(期間、対応範囲など)。操作が分からないシステムは放置されたり、使われないものになってしまう可能性があります。せっかく多額のコストを費やしたシステムなので、適切に運用できるように準備しなければなりません。

なお、サポートはベンダー側にとっても大きな負担になりやすい業務です。そのためチケット制になっていたり、月の中で動ける時間数を決めているケースが多いです。

調査

不具合かどうか判別できない場合、そのデータやコードをベンダーに調査依頼できます。ユーザー企業にとってはシステムはブラックボックスであり、内部でデータがどのように保持されているか、どう処理されているかは理解できないでしょう(する必要もないでしょう)。そうした調査はベンダー側で行うべきですが、こちらもまた保守契約内容によります。

追加開発は保守に含まれません

システムを利用していく中で感じる不便さなどを解消するためには、追加開発が必要になるでしょう。そうした追加開発や、元々のシステム開発に含まれない要件については保守契約の範囲外になります。そうした機能が必要な場合には、別途システム要件を決めた上で開発を行います。

もし、それがユーザー企業にとって小さな変更であったとしても、ベンダー側では変更による影響範囲の確認、ドキュメント修正、実開発、テストなど様々な工数が必要になります。ユーザー企業の観点でのちょっとした修正というのは、ベンダー側と問題になりやすい部分でもあります。あくまでも保守契約の範囲にとどまるものであるかどうか考えた上で、ベンダーと話し合う必要があります。

まとめ

ソフトウェア保守契約は、後から締結するのが難しい契約になります。システム開発を行った際には、その必要性を十分に考えた上で締結するようにしましょう。

なお、ソフトウェア保守契約はベンダーやプロジェクトによって内容が異なります。内容がプロジェクトに関する内容を適切に網羅しているかどうか、将来的に渡って十分なサポートが得られるかどうかを確認してください。

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