見積書は、契約前に発注者と契約内容を確認するために用いられる帳票です。事前に契約内容や金額を確認しておくことで、トラブルの防止につながります。
見積書は、自社に合ったテンプレートを作成してから複製して発行するのが一般的です。見積書のフォーマットがない場合は、無料でダウンロードできるテンプレートを活用しましょう。
本記事では、無料で使える見積書のエクセルテンプレート10選と、書き方を解説します。見積書のテンプレートをお探しの方は、ご活用ください。
目次
見積書の役割
見積書とは、商品やサービスを提供する事業者が、発注者に対して前もって契約内容を伝えるための帳票です。見積書を通じて事前に契約内容を確認することで、取引先と条件をすり合わせたり合意を取ったりします。
見積書には、次の役割があります。
- 受注者:発注者との間に起こりうるトラブルを未然に防ぐ
- 発注者:他社との相見積もりの比較や発注の検討材料として活用する
見積書があれば、受注前に認識のズレや数量調整ができるため、健全な取引を行ううえで重要です。
見積書の法的効力
見積書は、法律で発行が定められている帳票ではありません。ただし、建設業に限っては、建設業法第20条によって見積書の発行が義務づけられています。
(建設工事の見積り等)
第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
引用:建設業法|e-Gov
建設業を除いて、見積書には根拠法令がないため、法的効力もありません。
ただし、一度発行した見積書の記載事項を、あとから自由に変更できるわけではありません。また、見積書と発注書が発行されている場合は、契約書を交わさなくても契約の成立が認められます。
こうしたケースがあるため、見積書に効力を持たせたくない場合は、備考欄にその旨を明記しておくことが大切です。
見積書と請求書の違い
見積書と請求書は発行するタイミングが異なり、見積書が契約前なのに対し、請求書は取引の完了後に発行します。
見積書を発行した時点では金額は確定していませんが、請求書には確定した金額が記載されます。そのため、見積書と請求書では記載金額が異なるケースもあるのです。
見積時の金額から大幅に変更する場合は、変更前に発注者に連絡し、合意をとることが大切です。
見積書の基本テンプレートと書き方
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ここからは、見積書の基本テンプレートを使って、見積書の記載事項と書き方を解説します。一般的な記載事項は次のとおりです。
- 見積書を発行する宛先
- 見積書の発行日
- 見積書の通し番号
- 見積書の発行者情報
- 見積りの合計金額
- 明細情報
- 有効期限
- インボイス対応欄
- 備考欄
各記載項目の書き方を解説します。
1.見積書の宛名
見積書の宛名には、取引先の会社名や屋号、担当者氏名などを正式名称で記載します。宛先の種別によって、以下のように敬称を使い分けてください。
- 法人:御中
- 個人:様
会社名と担当者名を併記する場合は、「御中」と「様」の両方を使います。
2.見積書の発行日
見積書には有効期限を記載するのが一般的なため、「いつから」がわかるように発行日を記載します。西暦と和暦はどちらでも構いませんが、必ず年月日を記載しましょう。
3.見積書の通し番号
見積書の通し番号を振る決まりはありませんが、発行者が管理しやすいように記載するのが一般的です。通し番号を振っておくと、多数の見積書を発行するなかで、探しやすくなります。
以下のようにさまざまな振り方があるので、参考にしてみてください。
- 発行順につける:001、002、003……
- 年月日を絡める:202505_001、202505_002、202505_003……
- 顧客番号を使う:1234_001、1234_002、1234_003……
自社が管理しやすいように独自ルールを設けても問題ありません。
4.見積書の発行者情報
発行者情報には、自社の会社名や屋号、担当者名と住所、連絡先を記載します。インボイス対応版の見積書では、インボイス登録番号が必要です。見積書に発行者情報が明記されていると、発注者が見積書を見ながら発注連絡をかけられるメリットがあります。
なお、押印する場合は、発行者情報の右側を活用してください。法的な義務はありませんが、商慣習として押印するのが一般的です。
5.見積金額
明細欄にも見積金額の合計を算出していますが、見積書を見たときにパッと合計金額をつかめるよう、見積金額は別途記載欄を設けるのが一般的です。
今回は、インボイス対応欄を別で設けてあるので、税込表記にしています。ほかに、税抜表記で記載し、別途消費税がかかる旨を備考欄に記載する方法もあります。
6.明細情報
一般的な項目例はテンプレートのとおりですが、明細情報は、発行者の業種やサービス・商品の種別によって項目が異なります。必要に応じて編集してください。
インボイス対応版では、品目・内容ごとに税率を記載することで、税抜金額と消費税額を計算できるようにしています。
7.有効期限
見積書では、有効期限を記載するのが一般的です。今回は備考欄に「本見積の有効期限は発行日より30日です」と記載しました。有効期限を設定しておくと、価格変動による損失リスクを抑えられるほか、発注者の意思決定を促すことが可能です。
8.インボイス対応欄
見積書は、インボイス制度における「適格請求書」として活用できるわけではないため、特別インボイス対応欄は設けなくても問題ありません。
見積書だけで「適格請求書」として扱うケースはほとんどないものの、見積書と納品書をあわせてインボイスの要件を満たすことが可能です。その場合は、見積書と納品書のどちらかに、インボイス対応欄を設ける必要があります。
今回は、最初からインボイス対応欄を設けています。実態に合わせて削除しても構いません。
9.備考欄
備考欄には、特筆すべき事項を記載します。今回は「有効期限」と「納期・支払い条件について」を記載しました。発注者と受注者の認識にズレが生じないよう、記載しておくべきことがないか精査しましょう。
【無料】見積書のエクセルテンプレート10選
ここでは、見積書のエクセルテンプレートを10種類紹介します。
種類 | エクセルファイル |
---|---|
製造業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
教育・研修業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
海外取引向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
飲食業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
月額サブスクリプションサービス向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
卸売・小売業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
デザイン業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
コンサルティング業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
IT・システム開発業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
建設業向けの見積書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
今回は、すべてにインボイス対応欄を設けています。ダウンロードしたうえで、必要に応じて編集してご活用ください。
製造業向けの見積書テンプレート
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製造業向けの見積書では、部品番号や型番、仕様の違いが誤解を招きやすいため、品目ごとに詳細な仕様や数量単位を正確に記載することが大切です。また、必要に応じて納期を記載しておくと、発注者が製造計画と照らし合わせながら発注を検討できます。
教育・研修業向けの見積書テンプレート
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教育・研修業向けの見積書では、研修名・期間・人数・場所などを明記し、「1名あたり」や「日数あたり」などの単価根拠を明示することが大切です。細かく区切ると見にくくなる場合は、研修名や内容、講師名を1つの欄にまとめるとよいでしょう。
海外取引向けの見積書テンプレート
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海外取引向けの見積書は、発注先の指定に合わせて通貨を設定します。今回はUSDで記載しています。
飲食業向けの見積書テンプレート
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場合によっては、食材名や数量だけでなく、原産地・納品形態・賞味期限など衛生面や品質に関わる情報も記載する必要があります。食品を扱う場合は、税率の記載方法にも注意しましょう。
月額サブスクリプションサービス向けの見積書テンプレート
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月額サブスクリプションサービス向けの見積書では、契約期間・月額費用・初期費用・解約条件などを明示して、請求の起点と終了条件を明確にすることが重要です。
卸売・小売業向けの見積書テンプレート
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卸売・小売業では、単価・ロット・納期のブレが発生しやすいため、発注単位や最低注文数を明確にし、割引条件も記載しておきましょう。
デザイン業向けの見積書テンプレート
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デザイン業向けの見積書では、「制作費」だけでなく、修正回数や納品形式・著作権の扱いなどを明記してトラブルを防ぐことが重要です。そのため、明細欄に「備考」を設け、サービスや品目ごとに適宜必要条件を記載してください。
コンサルティング業向けの見積書テンプレート
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コンサルティング業向けの見積書では、期間・稼働日数・成果物の範囲などを具体的に記載し、曖昧な請求とならないように業務内容を明示することが重要です。
IT・システム開発業向けの見積書テンプレート
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IT・システム開発業向けの見積書では、開発内容・範囲・工数・使用技術を記載し、「追加対応の有無」や保守の可否などを見積段階で明確にしておくことが重要です。
建設業向けの見積書テンプレート
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建設業向けの見積書では、作業工程・材料費・人件費・外注費などを分けて記載し、工期・施工条件・変更時の対応を注記することが重要です。必要に応じて項目を増やしたり、明細情報だけ別紙に記載したりして、漏れのないようにしましょう。
見積書を作成・発行するときのポイント
見積書を作成するときは、以下のポイントに留意しましょう。
- 見積書をインボイスとして発行するケースはほとんどない
- 電子帳簿保存法への対応が必要
- 納期や支払い条件は明記する
- 見積書には必ず有効期限を記載する
取引先とのトラブルを防ぐためにも、正しく見積書を作成・発行するよう心掛けることが大切です。
見積書をインボイスとして発行するケースはほとんどない
2023年10月からスタートしたインボイス制度(適格請求書保存方式)は、主に請求書の発行時点での税額・税率の正確な記載が求められる制度です。見積書はあくまで契約前の参考資料であるため、基本的にインボイスとして扱われることはありません。
ただし、見積書に登録番号や適用税率・税額などのインボイス要件を満たす情報を記載しておくと、納品書や請求書とあわせてインボイスとして扱われる場合があります。
そのため、インボイス制度に対応した項目を記載しておくと、帳票管理がスムーズになります。
電子帳簿保存法への対応が必要
見積書は、原則として法人であれば7年間、個人事業主であれば5年間の保存義務があります。あわせて、2022年の電子帳簿保存法改正により、電子取引で授受した見積書は電子データのままで保存することが必要です。
とくに2024年1月以降は、メール添付やクラウド経由でやり取りした見積書も、紙に出力するのではなく、電子データで保存しなければならなくなりました。保存方法に不備があると、税務調査時に否認されるリスクもあるため注意が必要です。
作成した見積書は、電子データとして保存・管理できるよう、体制を整えましょう。
納期や支払い条件は明記する
納期や支払い条件が曖昧だと、トラブルになるおそれがあります。とくに受注から納品までの期間などは、口頭での確認だけで済ませず、必ず見積書に明記しましょう。
「納品は受注から2週間以内」「支払いは納品月の翌月末」など、具体的な日数を記載しておくことで、後の認識ズレや未入金トラブルを未然に防ぐことが可能です。
見積書には必ず有効期限を記載する
見積書には、内容がいつまで有効かを示す「有効期限」の記載も欠かせません。
有効期限を定めておくことで、原材料費の高騰や業績悪化に応じて価格条件を見直すことが可能です。
また、発注者側の稟議や意思決定をスムーズに進めるための「期限意識」にもつながります。
ただし、民法上は、有効期限内に限って発行者側からの条件変更や撤回ができない点には注意が必要です。
見積書の作成にはテンプレートを作成できるツールの導入がおすすめ
見積書の作成には、テンプレートの作成機能を備えたツールの導入がおすすめです。社内で見積書の形式が統一され、記載漏れや表記ミスを防げるほか、繰り返しの作業を効率化できます。
また、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法改正にも対応しやすく、記録の保存や検索もスムーズに行えます。エクセルでの作成に限界を感じている場合は、専用ツールの活用によって業務の正確性とスピードが向上するでしょう。
以下の記事では、おすすめの見積ソフトを紹介しているので、ツール探しの参考にしてみてください。
>関連記事:【2025年版】見積ソフトのおすすめ9選を徹底比較!機能や選び方まで詳しく紹介
テンプレートを使って効率的に見積書を作成しよう
見積書は、取引条件を明確にし、発注者とのトラブルを防ぐ重要な帳票です。テンプレートを活用することで、記載ミスや手間を減らし、だれでもスムーズに作成できるようになります。
とくに、法制度への対応や保存管理を求められる現代では、見積書作成ツールの導入も業務効率化に効果的です。目的や業種に合ったテンプレートを活用し、正確で見やすい見積書をスピーディーに作成しましょう。
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