企業の情シス担当者は社内システムの整備に加えて、ライセンスや資産管理、システムに関するオンボーディング、セキュリティ対策など業務内容が多岐に渡ります。ちょっとした不具合によって企業の業務全体に影響を及ぼす可能性があり、その責任も重大です。
そんな情シス担当者ならぜひ押さえておきたい技術キーワードを解説するのが本記事になります。今回は「ライセンス管理」を取り上げます。
目次
ライセンスとは
企業においては仕事上、様々なソフトウェアやクラウドサービスを利用します。そうした利用権であったり、免許や許可証のことをライセンスといいます。ライセンスがあることで安心してソフトウェアやサービスが利用できます。
かつてはダウンロード、インストールするソフトウェアに付随するライセンスが殆どでしたが、最近では様々な形態が登場しています。
ソフトウェアライセンス
インストールや利用時にライセンスが必要になるものです。かつてはCD-ROMやDVDにライセンスIDが書かれていたり、オンラインで購入してメール添付されていました。買い切り型として一度入れればいいだけのものもあれば、一定期間(年間など)で有効期限が切れるものもあります。
利用形態に応じて、いくつかのパターンがあります。
- コンピューターライセンス
コンピューターに紐付いたライセンスであり、同一コンピューターであれば利用者は誰でも問題ありません - ネームドライセンス
利用者に紐付いたライセンスです。ログインなどを行うことで、異なるコンピューターでも利用できます。後述するサブスクリプション型に近いモデルです。 - ドングルライセンス
専用のUSBメモリ(ドングル)を差し込むことでソフトウェアが動作するライセンスです。経理のソフトウェアなどで見られます。ソフトウェアのインストール自体は自由に行えます。
サブスクリプション型
SaaSなどで有名になったのがサブスクリプション型です。月額や利用量に応じた従量課金モデルがあります。ソフトウェア自体を購入するのではなく、利用権を購入する形になります。利用権は契約している限りは有効ですが、契約期間が終了すると失われます。
契約する際にはいくつかのモデルがあり、そのモデルに応じて利用できる機能が異なったり、速度や容量に制限がある場合もあります。
デジタルライセンス
MicrosoftのWindowsではデジタルライセンスが採用されています。これはハードウェア構成に紐付いたライセンスで、同一構成の状態であれば繰り返し再インストールしても問題ありません。しかしストレージやメモリなどのシステム構成を変えると無効になり、再認証が求められます。
多くの場合、構成変更後のライセンス認証は失敗しますのでMicrosoft社のサポートに連絡の上、ライセンスを解除してもらう必要があります。
プロセッサライセンス
Oracleなどのサーバーサイドで利用するソフトウェアで用いられるライセンス形態です。Webアプリケーションなどでデータベースを利用する場合、接続数はWebサーバーだけの分ですが、データを利用する人数は膨大になります。そのため、サーバーに搭載されているCPUを基にライセンス料が計算されます。
最近のCPUでは1CPUの中に複数コア含まれていますので、このコア数もライセンス料に関係します。
ネットワーク・フローティングライセンス
企業内などでソフトウェアを無数にインストールできますが、同時利用者数を制限したライセンスです。サーバー側でライセンス数を管理しており、その範囲内であればいつでも任意の方がソフトウェアを利用できます。
この手のソフトウェアでは、オフラインでの利用はできません。
アカデミック・ライセンス
教員や学生向けに提供される専用のライセンスです。企業で利用されることはほぼないでしょう。割安であったり、機能面で同価格帯と比べて優位な傾向があります。毎年更新が求められます。
オープンソース・ライセンス
オープンソースはオープンソース・ライセンスに基づいて公開されているソフトウェアです。ライセンスの条件下に基づいて、無償で利用が可能です。有名なライセンスはApache2/MIT/GPL/LGPLなどが知られていますが、実際には100以上のライセンスが存在します。
それぞれにライセンス条件が異なりますので、企業で利用する、OSSを利用したソフトウェアを販売する、OSSをサーバーに組み込んで利用するなどによって利用条件が変わりますので注意してください。
ライセンス管理ソフトウェア
多くの企業ではソフトウェアのライセンス管理を表計算ソフトウェアで行っているのではないでしょうか。Webサービスのサブスクリプションの場合、ライセンス管理用の画面も提供されることが多いでしょう。ライセンス管理用のソフトウェアもいくつかあります。
- Software License Management Tool – EZOfficeInventory
- らくらくPCクラウド(らくP)
- Jira Service Management
- Snipe-IT
ライセンス管理のポイント
管理対象を決める
今回は主にソフトウェア面を挙げていますが、ライセンス管理されるのはソフトウェアだけでなくハードウェアも含まれます。企業内の資産(アセット)管理とも合わせて考える必要があります。また、企業自体で管理されるものもあれば、部署や個人に紐付いて管理されている資産もあるでしょう。
そうした資産に対して、どのレベルで管理するかを決めた方が良いでしょう。
管理台帳を作る
まず各資産の洗い出しが大事です。同じ機器であっても、ユニークなIDを振り分けて管理する必要があるでしょう。ソフトウェアの場合は、どのPCにソフトウェアをインストールしているかを管理する必要があります。退職や人事異動などに伴って不要なソフトウェアをアンインストールしたり、管理画面で無効にする必要があります。
そうしたライセンスの一覧や、利用状況を管理するための管理台帳が必要です。管理台帳があれば、現在どのように資産が使われているかが一目で分かるようになるでしょう。前述したクラウドサービスを使ったり、表計算ソフトウェアを使って管理できるでしょう。
定期的な棚卸しを
ライセンス管理は煩雑になりやすいので、定期的に棚卸しをしましょう。自動化しやすいですが、稼働していないソフトウェアやハードウェアがあれば、別な人に振り分けたり、運用ルールの変更を検討しても良いでしょう。
まとめ
ライセンス管理は、企業のコンプライアンスを確実なものにするためにも大事な考えになります。そして、運用の工数がかかりやすく、煩雑になりやすいのが課題です。専用のソフトウェアを使ったり、ツールを組み合わせて自動化することを検討してください。
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