SharePointの承認ワークフローの作り方|標準機能とPower Automateの使い分け

2026年01月30日(金) SharePoint

SharePointで承認ワークフローを構築したいと考えているものの、「標準機能だけで足りるのか」「Power Automateが必要なのか」「どこから手を付ければよいのか」と迷っていませんか。紙やメールでの承認業務は進捗が見えにくく、テレワーク環境では一層非効率です。

本記事では、SharePointの標準承認機能とPower Automateを使った承認フローの作り方を、初心者でも実践できるよう手順とポイントを整理して解説します。条件分岐や多段階承認といった実務で求められる要件にも対応できる設定方法を、具体例とともに紹介します。

まずは自社の要件に合わせた最適なツール選びの判断軸を理解し、次に基本設定から応用的なフロー構築、そして運用時のトラブル対応まで、一連の流れを把握していきましょう。承認ワークフローのデジタル化は「業務の停滞を防ぐ」ための手段であり、その前提として「ルールの明文化」と「情報の集約」が重要です。フロー構築と並行して、マニュアルやナレッジを蓄積する基盤(NotePMなど)を整えることが、真の業務効率化につながります。

SharePointの承認ワークフローとは(概要と選択の判断軸)

SharePointにおける承認ワークフローとは、ドキュメントやリストアイテムの承認・却下をデジタル上で完結させる仕組みです。中小企業の6割以上がDXによる業務効率化やペーパーレス化を期待しており、承認フローのデジタル化はその中核となる施策です。この章では、標準機能とPower Automateの違い、導入メリット、そして自社に適したツール選びの基準を順に見ていきます。

SharePointの標準機能とPower Automate、どちらがいい?

SharePointには「コンテンツの承認」という標準機能が備わっており、ライブラリ設定から即座に導入可能です。ただし承認ステップが1段階に限定されるため、シンプルな承認フローにのみ適しています。一方、Power Automateを使えばTeams連携や条件分岐が可能で、実務上の複雑な承認ルートをほぼすべてカバーできます。

設定の容易さと柔軟性の違いがある

標準機能は管理画面のチェックボックスを有効にするだけで稼働し、専門知識を必要としません。しかし承認者の自動切り替えや、承認完了後の通知カスタマイズには対応できません。

Power Automateはノーコードツールとはいえ、トリガーやアクションの組み合わせを理解する学習コストが発生します。

ライセンス要件の違い

標準機能はSharePointライセンスに含まれているため、追加コストは発生しません。Power AutomateはMicrosoft 365の標準プランでも利用できますが、実行回数に上限があるため、全社展開時には有償プランの検討が必要です。

使い分けの判断の基準

簡易的な1段階承認なら標準機能、複雑な条件分岐や通知のカスタマイズが必要ならPower Automateを選択するのが基本です。

承認ワークフロー導入で得られる3つのメリット

デジタル化によって、業務効率化、ペーパーレス化、内部統制強化の3点で具体的な効果が得られます。

1. 業務効率化と進捗の可視化

承認履歴の自動記録により、いつ誰が承認したかが可視化され、内部不正防止や監査対応の工数が大幅に削減されます。メールや紙での回覧では「誰のところで止まっているか」を把握するために個別に確認が必要でしたが、SharePoint上では一覧で確認できます。

2. ペーパーレス化とテレワーク対応

物理的な押印や書類回覧が不要になることで、テレワーク環境下でも承認プロセスを停滞させずに実行可能です。出社しなければ承認できないという制約がなくなり、場所を問わず業務を進められます。

3. 内部統制の強化

承認者、日時、コメントを含む履歴が自動で記録され、改ざんのリスクが低減します。監査時にはSharePointリストから履歴をエクスポートするだけで証跡を提示でき、対応負荷が軽減されます。

また、承認履歴だけでなく「なぜその承認ルールになったのか」という背景(社内規定やマニュアル)をセットで管理することも重要です。NotePMを活用して規定を一元管理すれば、監査対応がさらにスムーズになります。

SharePoint標準機能による承認設定(コンテンツの承認)

最も手軽に承認フローを開始できる「コンテンツの承認」機能の設定手順を解説します。この章では、ライブラリ設定の具体的な操作手順と、標準機能の制限事項を理解した上でPower Automateへ移行すべきタイミングを判断できるようにします。

SharePointライブラリでのコンテンツ承認設定手順

特別なツール作成なしで、既存のライブラリに承認プロセスを組み込む方法を、画面操作の流れに沿って説明します。

1. ライブラリ設定画面を開く

対象のドキュメントライブラリを開き、画面右上の歯車アイコンから「ライブラリの設定」を選択します。設定画面が表示されたら、「バージョン設定」のリンクをクリックします。

2. コンテンツの承認を有効化

バージョン設定画面で「コンテンツの承認を必須にしますか?」という項目を「はい」に切り替えます。これだけで、ライブラリにアップロードされたファイルは承認待ち状態となり、承認されるまで一般ユーザーには非表示となります。

3. 承認者権限の割り当て

承認者には「デザイン」以上の権限が必要となるため、適切なアクセス許可レベルの割り当てを事前に行います。ライブラリの設定画面から「このドキュメント ライブラリの権限」を開き、承認を行うユーザーまたはグループに権限を付与します。

4. 承認・却下の実行

承認待ちのファイルは、承認者がライブラリを開くと「承認待ち」のステータスで表示されます。ファイルを選択し、「詳細」パネルから「承認」または「却下」を選択することで、承認プロセスが完了します。承認されたファイルは一般ユーザーにも表示されるようになります。

標準機能の制限事項とPower Automateへの移行判断

標準機能で対応できないケースを具体的に挙げ、どのタイミングでPower Automateによる構築に切り替えるべきかの判断指標を示します。

1段階承認の限界

標準機能では、承認者を複数設定することはできますが、「課長承認後に部長承認」といった段階的な承認ルートは実現できません。また、承認者は固定されており、「金額によって承認者を変える」といった条件分岐が必要になった場合は、標準機能の限界でありPower Automateの出番です。

通知のカスタマイズができない

標準機能では、承認依頼や承認完了の通知がシステム標準のメール文面で送信されます。件名や本文をカスタマイズしたり、Teamsでメンションを飛ばしたりといった柔軟な通知設定はできません。

承認後の自動処理が組めない

承認完了後に「ステータス列を自動更新」「ファイルを別フォルダへ移動」「関係者に一斉通知」といった後続処理を自動化することはできません。これらの要件がある場合は、Power Automateでフローを構築する必要があります。

Power Automateを使った承認フローの作り方(基本編)

この章では、SharePointリストとの連携から、通知の送信、ステータスの自動更新までの一連の流れを、テンプレート選択、リスト準備、フロー作成の順に見ていきます。

承認テンプレートの種類と選び方

Microsoftが提供する豊富なテンプレートの中から、日本の商習慣や一般的な事務手続きに適合しやすいものをピックアップして紹介します。

ドキュメント承認テンプレート

SharePointドキュメントライブラリにファイルがアップロードされたタイミングで承認フローを開始するテンプレートです。契約書や稟議書など、ファイル単位で承認が必要な業務に適しています。

申請管理テンプレート

SharePointリストにアイテムが追加されたタイミングで承認フローを開始するテンプレートです。休暇申請や経費精算など、フォーム入力形式の申請業務に適しています。「ドキュメント承認」ならファイルライブラリ用、「申請管理」ならリスト用のテンプレートを選択します。

テンプレートの検索方法

Power Automateのホーム画面で「テンプレート」タブを開き、検索ボックスに「SharePoint 承認」と入力すると、関連テンプレートが一覧表示されます。テンプレート名や説明文を確認し、自社の業務に最も近いものを選択します。

SharePointリストの準備と承認ステータス列の設定

フローを安定稼働させるために不可欠な、SharePoint側のデータ構造の作り方を解説します。ステータス管理用の列設定がポイントです。

リストの作成と列の追加

SharePointサイトで「新規」→「リスト」を選択し、リスト名を入力して作成します。次に、申請内容を入力するための列(例:申請者、申請日、金額、理由など)を追加します。列の種類は、テキスト、数値、日付など、入力内容に応じて選択します。

承認ステータス列の設定

「選択肢」列を用いて、申請中・承認済・却下といったステータスを定義し、デフォルト値を「申請中」に設定します。これにより、リストにアイテムが追加された時点で自動的に「申請中」ステータスが付与され、承認完了後にフローが「承認済」に更新する流れが実現できます。

承認者列の追加(オプション)

承認者を動的に指定したい場合は、「ユーザーまたはグループ」列を追加します。申請者が申請時に承認者を選択できるようにすることで、柔軟な運用が可能になります。

Power Automateフローの作成手順(トリガー・承認・通知)

トリガーの設定から、承認アクションの追加、承認結果に応じた条件分岐の作成まで、フローの核心部分を詳細に解説します。

1. トリガーの設定

Power Automateで「自動化したクラウドフロー」を選択し、トリガーに「SharePoint – アイテムが作成されたとき」を指定します。サイトのアドレスとリスト名を選択すると、リストにアイテムが追加された瞬間にフローが起動するようになります。

2. 承認アクションの追加

「新しいステップ」から「承認 – 開始して承認を待機する」アクションを追加します。承認の種類は「承認/拒否 – 最初に応答」または「承認/拒否 – 全員が応答」を選択します。承認依頼メールの本文には、申請内容へのリンクや動的なコンテンツを埋め込むことで、承認者の利便性を高められます。

3. 条件分岐の設定

承認アクションの後に「条件」アクションを追加し、承認結果が「承認」か「却下」かで処理を分岐させます。条件式には「結果」(承認アクションの出力)を指定し、値に「Approve」を設定します。

4. ステータス更新と通知

条件分岐の「はい」側(承認時)に「SharePoint – アイテムの更新」アクションを追加し、ステータス列を「承認済」に更新します。同様に「いいえ」側(却下時)には「却下」に更新する処理を追加します。さらに、申請者への通知メールやTeamsメッセージを送信するアクションを追加することで、承認結果が即座に伝わります。

条件分岐・多段階承認の設定方法(応用編)

この章では、条件分岐による承認ルートの自動切り替え、多段階承認と並列承認の実装、そして具体的なユースケースとして経費精算・休暇申請フローの設定を順に見ていきます。

条件分岐による承認ルートの自動切り替え

条件式の書き方や、複数の条件を組み合わせる際のテクニックを具体例を交えて解説します。

金額による承認者の切り替え

「条件」アクションを使用し、リスト内の数値を参照して「はい」「いいえ」の分岐を作成することで、動的なルート変更が可能です。例えば、金額列が10万円以上の場合は部長承認、未満の場合は課長承認といった設定ができます。条件式では「金額」列を選択し、演算子に「次の値以上」、値に「100000」を指定します。

部署属性による承認者の自動決定

金額だけでなく、申請者の部署属性をトリガーにして承認者を自動決定する「動的な承認者指定」も可能です。SharePointリストに「部署」列を追加し、条件アクションで「部署が営業部の場合は営業部長、総務部の場合は総務部長」といった分岐を設定します。

複数条件の組み合わせ(AND/OR)

「金額が10万円以上かつ部署が営業部の場合」といった複数条件を組み合わせる場合は、条件アクションの「詳細モード」を使用します。式エディタで「and」「or」関数を使い、複数の条件式を組み合わせることで、複雑なビジネスルールを実装できます。

多段階承認と並列承認の実装

直列的な多段階承認と、複数の承認者が同時にチェックを行う並列承認の設定方法とその使い分けを解説します。

多段階承認の設定

多段階承認は承認アクションを縦に並べることで実装でき、各段階で承認・却下の判定を繰り返す構造にします。例えば、「課長承認→部長承認→役員承認」という3段階の承認フローを作る場合、承認アクションを3つ連続で配置し、それぞれに条件分岐を設定します。1段階目で却下された場合は、2段階目以降の処理をスキップするように条件を設定します。

並列承認の設定

複数の承認者が同時にチェックを行う並列承認は、承認アクションの「承認の種類」で設定します。「全員の承認が必要」か「最初に応答した人のみ」かをアクション設定で選択し、組織のルールに合わせます。例えば、法務部と経理部の両方の承認が必要な契約書承認では「全員の承認が必要」を選択します。

直列と並列の組み合わせ

実務では、「まず課長が承認し、その後に法務部と経理部が並列で承認」といった、直列と並列を組み合わせたフローも必要になります。この場合、1段階目に課長承認の承認アクションを配置し、その後に並列承認の承認アクションを配置することで実現できます。

実務例:経費精算・休暇申請フローの設定

具体的なユースケースに基づき、どのようなフロー構造にすべきかのベストプラクティスを提示します。

経費精算フローの設計

経費精算では、金額によって承認者を切り替えるのが一般的です。例えば、5万円未満は課長承認のみ、5万円以上10万円未満は部長承認、10万円以上は役員承認といった段階的なルートを設定します。さらに、承認完了後に経理部へ自動通知を送信し、振込処理を促すアクションを追加すると、業務全体の効率が向上します。

休暇申請フローの設計

休暇申請では承認完了後にOutlookカレンダーへ予定を自動登録するアクションを追加すると、さらに利便性が向上します。承認アクションの後に「Office 365 Outlook – イベントの作成」アクションを追加し、申請者のカレンダーに休暇予定を登録します。これにより、承認者が承認ボタンを押すだけで、申請者のカレンダーに休暇が反映されます。

承認却下時の処理

却下時には、申請者に却下理由を通知するだけでなく、再申請を促すリンクを含めると親切です。条件分岐の「いいえ」側に、申請者へのメール送信アクションを追加し、本文に「却下理由:【承認者のコメント】」と「再申請はこちらから:【リストへのリンク】」を記載します。

承認ワークフローの運用とトラブルシューティング

構築したフローを安定して運用し続けるための管理手法を解説します。この章では、承認履歴の確認と監査ログ対応、フローエラー・遅延時のトラブルシューティング、そしてライセンス体系と制限事項の注意点を順に見ていきます。

承認履歴の確認と監査ログ対応

監査時に提示できる形式で承認履歴を残す方法と、Power Automateの実行履歴を確認する手順を解説します。

SharePointリストでの履歴管理

承認履歴の保存は、J-SOX法などが求める内部統制(統制活動)の要件を満たす上で極めて重要な役割を果たします。SharePointリストには、承認者、承認日時、承認結果、コメントを記録する列を用意し、フローで自動的に書き込むように設定します。これにより、いつ誰がどのような判断をしたかが一覧で確認できます。

Power Automateの実行履歴

Power Automateの管理画面では、各フローの実行履歴を28日間保持しています。実行履歴からは、トリガーが発火した日時、各アクションの実行結果、エラーが発生した場合のエラーメッセージなどを確認できます。監査対応では、この実行履歴をスクリーンショットまたはエクスポートして提示することが有効です。

長期保存のためのアーカイブ

28日を超える長期保存が必要な場合は、定期的にSharePointリストをエクスポートしてアーカイブする運用が推奨されます。リストの「Excelにエクスポート」機能を使えば、承認履歴を含むすべてのデータをExcelファイルとして保存できます。

フローエラー・遅延時のトラブルシューティング

接続エラーやタイムアウトなど、運用中によく遭遇するトラブルの原因特定と復旧手順を体系化して提示します。

実行履歴からのエラー確認

実行履歴の「未加工出力」を確認することで、どのステップでどのようなエラーコードが出たかを正確に把握できます。エラーメッセージには、接続の失敗、権限不足、タイムアウトなどの原因が記載されているため、それに応じた対処を行います。

よくあるエラーと対処法

接続エラーが発生した場合は、SharePointサイトやリストへのアクセス権限を確認します。タイムアウトエラーが発生した場合は、承認者が長時間応答しなかったことが原因のため、承認期限を設定するか、リマインド通知を追加します。権限不足エラーが発生した場合は、フローの実行者に適切なSharePoint権限を付与します。

エラー通知の設定

フローがエラーで停止した場合に、管理者へ自動通知を送信する設定を追加すると、迅速な対応が可能になります。フローの設定画面で「実行後」→「エラー時にメールを送信」を有効にし、通知先メールアドレスを指定します。

FAQとマニュアルの整備

エラー発生時に現場が自力で解決できるよう、NotePM等でFAQや対処マニュアルを共有しておくと運用負荷が軽減されます。よくあるエラーとその対処法を文書化し、検索しやすい形で社内ポータルに掲載します。特にNotePMは強力な検索機能を持つため、必要な情報に即座にアクセスでき、IT担当者への問い合わせ削減に貢献します。

ライセンス体系と制限事項の注意点

プランごとの機能差や制限を正しく理解し、将来的な拡張を見据えた構成検討のポイントを解説します。

Microsoft 365標準プランでの制限

Microsoft 365の標準ライセンス枠内での実行回数には上限があるため、全社展開時には有償プランの検討が必要です。標準プランでは、ユーザーあたり月間の実行回数に制限があり、これを超えると追加料金が発生するか、フローが停止します。

有償プランの検討タイミング

全社で月間数千件以上の申請が発生する場合や、複雑なフローで実行回数が多い場合は、Power Automate Per Userプランまたは Per Flowプランへの移行を検討します。Per Userプランはユーザー単位での無制限実行、Per Flowプランは特定フロー単位での無制限実行が可能です。

モバイルアプリの制限

モバイルアプリからの承認操作は非常に便利ですが、一部の高度なカスタマイズUIが反映されない場合がある点に留意します。複雑な入力フォームや添付ファイルの確認が必要な承認では、PC環境での操作を推奨する運用ルールを設けることが現実的です。

SharePoint承認ワークフローの作り方まとめ

SharePointの標準機能とPower Automateを使い分けることで、自社の業務要件に合わせた承認ワークフローを構築できます。まずは特定の部門・業務での「スモールスタート」で成功体験を作り、徐々に全社へ展開するのが失敗しないコツです。

標準機能は設定が容易で即座に導入できますが、1段階承認に限定されます。複雑な条件分岐や多段階承認が必要な場合は、Power Automateのテンプレートを活用することで、専門知識がなくても実用的なフローを短時間で構築できます。

運用フェーズでは、承認履歴の適切な保存と監査対応、エラー発生時のトラブルシューティング体制の整備が重要です。フロー構築と並行して、NotePMで運用ルールを可視化することが、形骸化を防ぎ真のペーパーレス化を実現する近道です。

本記事で紹介した手順とポイントを参考に、まずは小規模な承認フローから始めてみてください。実際に運用しながら改善を重ねることで、組織全体の業務効率化とデジタル化が着実に進んでいきます。