発注書は、商品やサービスを提供する事業者や個人に対して、注文を依頼するための帳票です。下請法に該当しない取引では注文書を発行する法的義務がないものの、スムーズな取引を行うために商慣習として発行されています。
自社に合った発注書のテンプレートを作成しておくと、複製して活用できるため便利です。発注書のフォーマットがまだないのであれば、無料でダウンロードできるテンプレートを活用しましょう。
本記事では、発注書のエクセルテンプレート7選と、書き方および作成・発行のポイントを解説します。発注書のテンプレートをお探しの方は、ご活用ください。
目次
発注書の役割
発注書とは、事業者や個人に対して商品やサービスを依頼するとき、注文内容を明確にするために発行する帳票で、取引条件を明確にして取引を適正化する役割があります。
発注書を通じて認識をすり合わせておけば、認識のズレによって起こるトラブルを未然に防ぐことも可能です。
契約の証拠、取引・会計管理にも活用されるほか、下請法やフリーランス保護法の対応としても有効です。
発注書と注文書の違い
発注書と注文書は同じ帳票で、どちらも「取引相手に対して商品やサービスを依頼するための書類」を指します。
しかし、実務上は使う立場によって呼び方が異なることがあります。
- 発注書:発注する側(買手)が作成・送付する書類
- 注文書:受注する側(売手)から見た呼び名で、受け取った書類を指すことが多い
つまり、書式や内容に明確な違いはなく、立場による呼び方の違いにすぎません。どちらを使っても問題はありませんが、社内の文書管理ルールや取引先の呼び方に合わせるのが一般的です。
注文書はインボイス制度の影響を受けない
2023年10月に施行されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、主に請求書や領収書などの「支払いの証拠書類」を対象としています。
注文書や発注書は取引条件を提示するための書類であり、インボイス制度の適用対象外です。
そのため、注文書にインボイス対応の記載(登録番号・税率区分など)は必須ではなく、従来どおりの様式で発行できます。ただし、後続の請求書や納品書との内容の整合性には注意が必要です。
発注書の法的効力
発注書は、民法第522条1項に定められている「契約の申込み」として扱われることがあり、受注者が承諾すれば契約が成立します。
【民法】
(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
引用:民法|e-GOV
署名・押印がなくても、発注書と納品・請求書のやり取りで契約成立の証拠となるケースも多く、取引内容の明確化やトラブル発生時の証拠として有効です。
ただし、下請法に該当しない取引は、発注書を発行する義務はありません。
下請法における発注書の位置づけ
下請代金支払遅延等防止法(下請法)では、「発注内容や支払条件を記載した書面(3条書面)」を交付することが義務づけられています。つまり、下請法に該当する取引は、発注書の発行が必要です。
【下請代金支払遅延等防止法】
(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
とくに、親事業者が中小事業者に発注する場合、書面の交付がないと法令違反となるため、発注書の発行は実務上も必須とされています。
なお、発注書に限らず、契約書や委託確認書、必要事項が記載された電子データでも代替可能です。
3条書面としての発注書の記載事項チェックリスト
3条書面として発注書を発行する場合は、次の事項が記載されているかどうかをチェックしましょう。
3条書面に記載すべき主な項目
記載項目 | 概要 |
---|---|
給付の内容 | 発注する製品や役務の詳細 (例:商品名、型番、業務内容など) |
下請代金の額 | ・支払う金額 ・税込・税抜の表記も明記するのが望ましい |
支払期日 | 下請代金を支払う日 (例:納品月の翌月末など) |
支払方法 | 銀行振込、手形払いなど具体的な支払手段 |
納期・納品場所 | 商品やサービスの納入日・納入場所(必要に応じて) |
委託日(契約日) | 発注や業務委託を行った日 |
検査に関する事項 | 納品物の検査を行う場合は、その基準や検査日(該当する場合のみ) |
報酬の支払方法 | 現金以外(ポイント、物品など)で報酬を支払う場合の詳細(該当する場合のみ) |
これらは、必ずしも「発注書」だけで満たす必要はなく、契約書・確認書・明細添付などと組み合わせても構いません。ただし、いずれも内容が明確であることが求められます。
フリーランス保護法における発注書の位置づけ
2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス保護法)」では、フリーランスに業務委託を行う発注者に対し、取引条件を明示した書面または電子データの交付が義務づけられました。
【特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律】
(特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
第三条 業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって公正取引委員会規則で定めるものをいう。以下この条において同じ。)により特定受託事業者に対し明示しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その明示を要しないものとし、この場合には、業務委託事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
引用:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律|e-GOV
具体的には、次の項目の記載が必要です。
【書面等による取引条件の明示を満たす記載項目】
- 業務の内容
- 報酬の額
- ⽀払期⽇
- 発注事業者・フリーランスの名称
- 業務委託をした⽇
- 給付を受領/役務提供を受ける⽇
- 給付を受領/役務提供を受ける場所
- (検査を⾏う場合)検査完了⽇
- (現⾦以外の⽅法で⽀払う場合)報酬の⽀払⽅法に関する必要事項
引用:フリーランスの取引に関する新しい法律が11⽉にスタート︕|内閣官房
発注書にこれらを記載して交付すれば、法令に準拠した対応が可能となります。曖昧な契約内容によるトラブルを防ぐ意味でも有効です。
なお、書面交付がなければ指導や勧告の対象になる場合もあるため、制度への対応が求められます。
発注書の基本テンプレートと書き方
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ここからは、基本テンプレートを使って、一般的な注文書の書き方を解説します。
注文書の記載項目は次のとおりです。
- 発注書の宛名
- 発注書の発行日
- 発注書の通し番号
- 発注書の発行者情報
- 発注金額
- 納品希望日・納品場所・支払条件
- 明細情報
- インボイス欄(任意)
- 備考欄
漏れなく必要事項を記入し、適切な取引を行いましょう。
1.発注書の宛名
発注書の宛名には、法人であれば会社名、個人であれば氏名や屋号などを正式名称で記載しましょう。宛名の下に発注を依頼する旨とあいさつを添えるのが一般的です。
宛先の種別によって、敬称は以下のように使い分けます。
- 法人:御中
- 個人:様
会社名と担当者名を併記する場合は、「御中」と「様」の両方を記載してください。
2.発注書の発行日
発注書の発行日は、発注日に該当します。納期を指定する場合はとくに重要なので、必ず記載しましょう。西暦と和暦はどちらでも構いませんが、正確に年月日を記載してください。
3.発注書の通し番号
通し番号は必要なわけではありませんが、管理を円滑化するために記載するのが一般的です。見積書を受け取っている場合は、見積書番号と紐づけておくと、より管理がしやすくなります。
4.発注書の発行者情報
発注先に「だれからの発注か」がわかるよう、発行者情報を明記しましょう。会社名と住所、連絡先を書くのが一般的です。
なお、今回のテンプレートのようにインボイス登録番号も明記しておくと親切です。
5.発注金額
発注金額は、パッと見たときにすぐつかめるよう、大きめに記載します。明細の合計欄だけで済ませるケースもありますが、見やすさを考慮すると別途表示するのが親切です。
記載方法は、税込と税抜どちらでもよいですが、必ず明記するようにしましょう。
6.納品希望日・納品場所・支払条件
請求書や見積書にはない項目で、注文書に記載したほうがよい項目が納品希望日・納品場所・支払条件です。
発注先は、発注書を見て納品の準備をするため、納品に必要な情報はすべて記載しておく必要があります。納品希望日には年月日と時間を、納品場所には住所と連絡先を記載しましょう。支払条件は、見積時に確認した内容と相違ないよう記載してください。
なお、これらの項目は備考欄に記載するケースもあります。
7.明細情報
明細情報には、注文内容を正確に記載します。数量や単価に間違いがないよう、綿密にチェックしましょう。
8.インボイス欄(任意)
注文書は、適格請求書として扱われることはないため消費税を記載する義務がありません。インボイス欄を設けても、適格請求書とは認められないので注意してください。
今回はインボイス欄を設けましたが、削除しても問題ありません。
9.備考欄
備考欄には、発注先とのトラブルを避けるために明記しておくべきことを記載します。たとえば、遅延が発生したときの取り決めや注文内容が変更になるときの対応などです。
見積書を交わしたときに確認した内容をあらためて記載するケースもあります。取引先との関係も考慮しつつ、適正に取引できるように、記載すべき内容を精査しましょう。
【無料】発注書のエクセルテンプレート7選
ここでは、発注書のエクセルテンプレートを7種類紹介します。
見出し | エクセルファイル |
---|---|
基本の注文書テンプレート【インボイス欄なし】 | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
値引き対応欄ありの発注書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
繰越金欄ありの注文書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
源泉徴収税欄ありの発注書テンプレート【インボイス欄なし】 | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
源泉徴収税欄ありの発注書テンプレート【インボイス欄あり】 | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
品番・製品仕様欄ありの注文書テンプレート【A4ヨコ型】 | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
海外取引向けの英語版注文書テンプレート | ダウンロードする(個人情報入力なし) |
個人情報の入力をせずに無料でダウンロードできるので、お気軽にご活用ください。
基本の注文書テンプレート【インボイス欄なし】
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こちらは、インボイス対応欄なしの一般的な発注書テンプレートです。消費税欄を設けていますが、削除しても問題ありません。消費税欄を削除する場合は、合計欄の税込表記を税抜に変更してお使いください。
値引き対応欄ありの発注書テンプレート
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こちらは、値引き額を記載できる発注書テンプレートです。取引先との関係や注文する商品の料金体系によっては値引きが発生するはずです。見積書を交わしたときに提示された値引き額を転記してお使いください。
繰越金欄ありの注文書テンプレート
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こちらは、繰越金額を記載できる注文書テンプレートです。通常、以前の取引で未入金となっている繰越金は、発注書ではなく請求書などに記載します。しかし、発注書にも記載しておくことで、請求時に払い忘れを防止することが可能です。
源泉徴収税欄ありの発注書テンプレート【インボイス欄なし】
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こちらは源泉徴収税の記入欄がある発注書テンプレートです。事業者は、個人事業主(フリーランス)に対して業務委託をした場合、書面や電磁的方法(メール・SNSなど)で取引条件を明示する義務があります。
発注書に必要事項を記載すれば、この要件を満たすことが可能です。備考欄も活用して、記載漏れがないようにしましょう。
源泉徴収税欄ありの発注書テンプレート【インボイス欄あり】
>このテンプレートをNotePMで使ってみる(無料)
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こちらは、源泉徴収税額の記入欄とインボイス欄を設けた注文書テンプレートです。注文書に消費税を明記する義務はありませんが、取引先によって明記してほしいといわれるケースもあります。その際は、こちらのテンプレートを活用してください。
品番・製品仕様欄ありの注文書テンプレート【A4ヨコ型】
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こちらは、品番や製品仕様欄などを設け、明細欄を充実させた注文書テンプレートです。主に、製造業でご活用いただけます。
海外取引向けの英語版注文書テンプレート
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こちらは、海外取引向けの英語版注文書テンプレートです。内容は日本語版と変わりませんが、通貨をUSDにしています。取引先の通貨に合わせてお使いください。
発注書の発行タイミング
発注書は、取引によって発行タイミングが変わります。
- 一般的な発注書の発行タイミング
- 下請法における発注書の発行タイミング
取引の種別を確認し、適切なタイミングで発注書を発行しましょう。
一般的な発注書の発行タイミング
通常、発注書は、次の流れで発行されます。
- 見積もりの依頼:発注者が受注者に対して見積もりを依頼する
- 見積書の受領:受注者から見積書が提出される
- 発注書の発行:見積内容を確認し、発注者が発注書を作成・送付する
- 注文請書の受領:受注者が注文請書を発行し、発注者に送付する
このように、発注書は見積書の内容を踏まえたうえで発行するのが一般的です。この流れによって取引条件が双方で明確になり、認識のズレによるトラブルを未然に防げます。
下請法における発注書の発行タイミング
下請法では、親事業者が下請事業者に対して業務を委託する際、契約内容を記載した書面(3条書面)を速やかに交付することが義務づけられています。この3条書面として発注書を使用する場合、発注の意思表示後、原則として「すぐに」注文書を発行しなければなりません。
ただし、発注書を発行するタイミングでは具体的に記載できない項目もあるでしょう。この場合、後日書面を交付することで、法令に準拠することが可能です。
発注書の作成にはテンプレートを作成できるツールの導入がおすすめ
発注書の作成には、テンプレート機能を備えたツールの導入がおすすめです。書式や記載項目をあらかじめ統一できるため、記入漏れや入力ミスを削減できるほか、業務の属人化を防止できます。
また、繰り返し行う発注業務を効率化できるほか、インボイス制度や電子帳簿保存法といった制度改正にも柔軟に対応しやすくなるのもメリットです。エクセルテンプレートを使った運用に手間やリスクを感じている場合は、専用ツールの導入によって、正確性とスピードの向上が期待できます。
以下の記事では、おすすめの電子帳票システムを紹介しているので、ツール探しの参考にしてみてください。
>関連記事:【2025年版】電子帳票システム おすすめ12選を徹底比較!
テンプレートを使って効率的に発注書を作成しよう
発注書は、取引条件を明示し、受注者との認識違いを防ぐために重要な帳票です。テンプレートを活用することで、記載ミスや作成の手間を軽減でき、だれでも正確に作成できるようになります。
とくに、下請法やフリーランス保護法などの法制度への対応や保存管理が求められる場面では、発注書作成ツールの導入も有効です。目的や業務に合ったテンプレートを活用し、正確かつ効率的に発注書を作成しましょう。
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