【スキル別】AIエージェントの作り方を5ステップで解説

2026年05月29日(金) AI

AIエージェントの作り方は、目的の明確化→開発方法の選択(ノーコード/ローコード/フルコード)→ナレッジ準備→ワークフロー設計→テスト・改善の5ステップで進めます。使うツールや技術スタックが変わっても、この流れ自体は共通です。

AIエージェントとは、ユーザーの指示を起点に自律的にタスクを判断・実行するAIシステムです。ChatGPTのような対話型AIが1回の質問に1回答えるのに対し、AIエージェントは複数の処理を自動で連鎖実行できます。

たとえば「週次レポートを作って送信する」という指示1つで、データ収集・集計・文章生成・メール送信までを一気通貫で動かせます。プログラミング不要のノーコードツールも充実しており、非エンジニアでも構築に踏み出せる環境が整っています。本記事では、スキル別に選べる3つの開発アプローチと、どのアプローチでも共通して使える5ステップの作り方、および本番運用で失敗しないための鉄則を解説します。

私たちが運営するNotePMは、社内のナレッジを一元管理できるAI搭載の社内wikiツールです。AIエージェント開発の成否を分ける「ナレッジの整備」という工程で、社内情報の集約と活用を支援します。

AIエージェントを作るには何から始める?3つの開発アプローチと選び方

AIエージェントを作る方法は、必要なスキルやカスタマイズ性によって大きく3つに分かれます。どのアプローチが自分に合うかは、「必要なスキル」「開発にかけられる時間」「どこまでカスタマイズしたいか」の3軸で判断できます。以下の比較表を参考に、自分の状況に近いものを選んでください。

アプローチ必要スキル開発速度カスタマイズ性代表ツールコスト目安
ノーコード不要速い(数時間〜数日)低〜中Dify、Microsoft Copilot Studio無料プランあり。有料は月数千円〜
ローコード基本的なIT知識中程度(数日〜数週間)中〜高n8n、Automation 360月数千円〜数万円
フルコードプログラミング必須遅い(数週間〜数ヶ月)最高Python + LangChain/LangGraphインフラ・人件費込みで変動大

どのアプローチを選ぶかは、「何を作りたいか」と「誰が作るか」の2軸で判断します。まずAIエージェントを試してみたい段階なら、ノーコードツールでPoCを始めるのが現実的な選択です。既存の社内システムと連携させる必要があるならローコード、完全に独自の設計が必要な要件ならフルコードへと移行します。

いずれも「最初から完璧を目指す」より、小さい範囲で動かして段階的に拡張していく姿勢が成功につながります。

1. ノーコード(Dify・Copilot Studioなど)

ノーコードツールは、プログラミングを一切書かずにAIエージェントを構築できる開発環境です。ワークフローをドラッグ&ドロップで視覚的に組み立てる操作が中心で、AIのモデル選択・ナレッジの登録・応答のテストまですべてブラウザ上で完結します。

代表的なツールがDifyとMicrosoft Copilot Studioです。Difyは無料のSandboxプランで200メッセージクレジット・5つのアプリ・50MBのナレッジストレージを利用でき(出典:Dify「プランと料金」)、まず試す用途に十分な余裕があります。Copilot StudioはMicrosoft 365環境と親和性が高く、TeamsやSharePointとの連携を前提とした構成がしやすいツールです。

ノーコードが向いているのは、非エンジニアや業務担当者がまず自分の手でエージェントを動かしてみたい段階です。一方、複雑な条件分岐や外部APIとの細かい連携が必要になった段階では、ノーコードだけでは対応しきれない場面が出てきます。プロトタイプで用途を確認してから、要件に合わせてローコードへ移行する判断も選択肢の一つです。

2. ローコード(n8n・Automation 360など)

ローコードは、ノーコードとフルコードの中間に位置するアプローチです。ビジュアルなフロー設計を主軸にしつつ、必要な箇所にはコードのスニペットを組み込めます。ノーコードより柔軟に動作を制御でき、フルコードほどの実装コストはかかりません。

n8nやAutomation 360は、既存の業務システムとの連携に強みを持ちます。SalesforceやSlack、社内データベースなど数百種類のコネクタが用意されており、「既にある仕組みをAIでつなぐ」用途に向いています。社内にITサポートを受けられる体制がある場合、ローコードは開発速度とカスタマイズ性のバランスが取りやすいアプローチです。

向いているのは、多少のIT知識があり既存システムとの連携を必要とするチームです。ただし、全体のフロー設計が複雑になるにつれ、保守のコストも上がります。要件が固まる前に複雑なフローを作り込みすぎないよう注意してください。

3. フルコード(Python + LangChainなど)

フルコードは、すべてをプログラムで記述する開発スタイルです。要件に合わせて完全にカスタマイズでき、複雑なワークフローやマルチエージェント(複数のエージェントが協調して動く構成)も設計できます。

現在最も普及している組み合わせがPython + LangChain/LangGraphです。LangChainはAIエージェントの主要な処理(プロンプト管理・ツール呼び出し・メモリ管理)を構造化するライブラリで、LangGraphはエージェント間の状態管理と分岐制御を担います。TypeScript環境ではVoltAgentが同様の役割を果たし、フロントエンドチームが主体のプロジェクトで選ばれるケースがあります。

フルコードが適しているのは、エンジニアが主体となって開発を進められる体制が整っている場合です。自由度は最も高い反面、開発期間・テスト・保守のコストはノーコード・ローコードと比べて大きくなります。「エンジニアがいるから何でも作れる」ではなく、要件の複雑さがフルコードを正当化するかどうかを判断基準にしてください。

AIエージェントの作り方は?共通して使える5ステップを解説

どのアプローチを選んでも、AIエージェントの開発は「業務の定義→ナレッジ整備→ワークフロー設計→テスト→公開・改善」という共通プロセスで進みます。

ステップ1:自動化する業務とゴールを決める

AIエージェント開発で最初に固めるべきは「何の業務を、どこまで自動化するか」です。この定義が曖昧なまま開発を進めると、できあがったエージェントが現場で使われないまま終わるリスクが高まります。

自動化の候補として挙がりやすい業務は、社内問い合わせ対応・議事録の作成・定型レポートの生成・Webからのデータ収集などです。いずれも「同じ手順を繰り返す」「情報を集めて整形する」という共通点があります。AIエージェントが最も効果を発揮するのも、このような構造化された繰り返し業務です。

選んだ業務に対して、「成功の状態」を数値で定義します。たとえば「社内問い合わせへの初回応答時間を4時間から10分以内に短縮する」「議事録作成にかかる時間を30分から5分以下にする」といった形です。ゴールが明確なほど、テストや改善の判断基準も立てやすくなります。なお、最初のPoCはスコープを1業務に絞り、ゴールを数値で定義することをお勧めします。

ステップ2:ナレッジとデータを整備する

AIエージェントの回答精度は、参照できるナレッジの質に直結します。KPMG「Agent Deployment Accelerates as Organizations Build Confidence Through Early Wins」では、データ品質がAIエージェント導入における最大の障壁として82%の企業が課題に挙げており、参照するデータが古い・不正確・散在しているままでは、エージェントは期待どおりに動きません。

ナレッジ整備の第一歩は、社内のマニュアル・FAQ・業務手順書を一箇所に集約し、最新状態に保つことです。「どのファイルが正しい版か分からない」「部署ごとに違うフォルダで管理している」という状態のままではエージェントに読み込ませる素材が揃いません。まず情報の在処を一本化し、更新ルールを決めることが先決です。

ナレッジが整ったら、RAG(検索拡張生成)の仕組みでエージェントに参照させます。RAGは、ユーザーの質問に関連する社内文書を検索してLLMに渡す設計で、LLM自体が「知らない情報」についてもナレッジベースから正確な情報を引き出せるようになります。

ナレッジ管理ツールの一例として、当社が運営するNotePMを紹介します。Word・Excel・PDFの中身まで全文検索でき、表記ゆれや同義語も自動で検知する関連度検索を備えています。AIチャットボット機能では、登録されたナレッジを参照しながら社内の問い合わせに自動回答できます。12,000社以上に導入されており、30日間の無料トライアルで実際の運用感を確かめられます。ナレッジ整備はエージェント開発と並行して進めるのではなく、エージェント構築を始める前に完了させておくべき工程です。

ステップ3:ワークフローと権限を設計する

ワークフローの設計では、「トリガー」「アクション」「条件分岐」の3要素を組み合わせて処理の流れを定義します。トリガーはエージェントを起動するきっかけ(ユーザーからのメッセージ・定時実行・外部イベントなど)、アクションは実際に行う処理、条件分岐は状況に応じた分岐ロジックです。

1つ目は社内問い合わせ対応のフロー:Slackに質問が投稿される(トリガー)→ナレッジベースを検索する(アクション)→関連情報があれば回答を返し、なければ担当者に転送する(条件分岐)。2つ目は定期レポートのフロー:毎週月曜9時(トリガー)→先週のデータをBIツールから取得する(アクション)→集計・文章生成を行いメールで送信する(アクション)、という構成です。

権限設計では「最小権限の原則」を守ります。エージェントには、そのタスクに必要な最低限のアクセス権だけを付与するという考え方です。たとえば議事録作成エージェントに対して、議事録の読み書き権限は与えますが、人事データベースへのアクセスは与えません。

外部への送信・データの削除・決済処理など影響が大きい操作については、エージェントが単独で実行しないよう設計します。こうした操作を含むワークフローでは、人間の承認ステップをどう組み込むかが鍵になります。この点の詳細は「本番運用で押さえたい3つの鉄則」で改めて扱います。

ステップ4:テスト環境で動作を検証する

エージェントを本番環境に出す前に、テスト環境で動作を確認します。まず正常系、つまり想定どおりの入力に対して期待する出力が返ってくるかを確認するところから始めます。

正常系が通ったら、次は異常系と境界値のテストに移ります。たとえば「ナレッジベースに情報がない質問をした場合、エージェントはどう応答するか」「日本語・英語が混在した入力を与えたらどうなるか」「極端に短い、または長い入力ではどうか」といったケースです。想定外の入力への挙動を確認しておかないと、本番で予期しない問題が起きたときの原因特定が難しくなります。

ハルシネーション(AIが事実と異なる情報を自信を持って生成する現象)のチェックも外せません。ナレッジベースに存在しない情報をエージェントが「回答」として出力していないかを、複数のテストケースで確認します。問題が見つかった場合の対処は主に2つです。

プロンプトの書き直しで回答の範囲をナレッジ内に限定するよう指示する方法と、ナレッジベースに不足していた情報を追加して参照精度を上げる方法を組み合わせます。

テストはリリース前の1回で完結するものではなく、改善サイクルの中で繰り返し実施します。最初のテストでは「この業務フローは動く」という確認ができれば十分です。

ステップ5:公開して改善サイクルを回す

テストを通過したら、まず社内の限定メンバーへの先行公開から始めます。全社展開を急がず、5〜10名程度の実際の利用者にフィードバックを集める期間を設けます。この段階で見つかった問題は修正コストが低く、本番での大きなトラブルを防ぎやすくなります。

フィードバックの収集方法はシンプルで構いません。エージェントの回答の下に「役に立った/立たなかった」のボタンを置いたり、Slackの専用チャンネルで意見を拾うだけでも有効です。大切なのは、フィードバックをナレッジの更新・プロンプトの調整・ワークフローの修正という具体的なアクションに変換するサイクルを定例化することです。

運用が軌道に乗ったあとも、定期的な動作確認が必要です。LLMのモデルバージョンがアップデートされると、同じプロンプトでも出力の傾向が変わることがあります。「先月まで正常だった回答が変わっている」という事態を早期に検知するため、月1回程度の動作確認と設定見直しを仕組みとして組み込んでおきます。

AIエージェントは「作って終わり」ではなく、継続的に育てていくものです。リリース後の改善サイクルこそが、エージェントが実際の業務成果につながるかどうかを決めます。

AIエージェントを本番運用するには?失敗しないための3つの鉄則を解説

AIエージェントの開発と運用には、技術的な課題以外にもプロジェクト運営上のリスクが存在します。Gartner「Gartner Predicts Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027」では、2027年末までにAIエージェントプロジェクトの40%以上がコスト増・不明確なビジネス価値・リスク管理の不備を理由に中止されると予測されています。

この厳しい現実を踏まえ、プロジェクトを継続させるための3つの鉄則を押さえておきます。

1. 小さい業務から段階的に拡張する

AIエージェント市場は現在、まだ黎明期にあります。矢野経済研究所の調査では、AIエージェントを実際に利用している企業は3.3%にとどまっており、導入を検討中の企業が13.5%、関心があり情報収集中の段階の企業が49.3%という内訳です(出典:矢野経済研究所「国内生成AI/AIエージェントの利用実態に関する法人アンケート調査(2026年)」)。大多数の企業がまだ様子を見ている段階だからこそ、最初から大規模な導入を目指してリスクを取る理由はありません。

スモールスタートの具体的な進め方として「1つの業務×1つのチーム×3ヶ月」のPoCを提案します。最初の3ヶ月は、1つの業務プロセスを1チーム内で動かし、成果と課題を測定します。そこで得た知見をもとに、2つ目の業務・他のチームへと展開するかどうかを判断します。

Gartnerが指摘する「コスト増・不明確なビジネス価値・リスク管理の不備」はいずれも、初期段階でスコープを絞らなかったプロジェクトで起きやすい問題です。最初のPoCを小さく完成させることが、次のフェーズへの説得力ある根拠になります。

2. 人間の承認ステップを組み込む

AIエージェントにどこまで自律的に動かせるかは、セキュリティリスクとのトレードオフです。OWASPが定義したAIエージェントの15の脅威をNRIセキュアテクノロジーズが分析したところ、73%の脅威が従来のセキュリティ手法では検知困難であることが判明しています(出典:NRIセキュアテクノロジーズ「AIエージェント時代のセキュリティ設計|脅威の73%は検知困難、見えないリスクの本質とは?」)。

既存の防御手法だけに頼ることへの限界が、この数字から見えてきます。

こうしたリスクに対する現実的な対策が、Human-in-the-loop(人間の判断を挟む設計)です。エージェントがすべての操作を自律的に実行するのではなく、影響が大きい操作の前に人間の承認を求めるフローを組み込みます。

  • 外部への情報送信(メール・チャットへの投稿)は、実行前に担当者が内容を確認してから送信を承認する
  • データの削除・上書きを伴う操作は、エージェントが実行案を提示し、人間が最終決定する
  • 金額が発生する処理(API呼び出し・購入・予約)は、上限金額を設定し超過時に自動停止するルールを設ける

完全自律化は長期的なゴールとして持ちつつ、最初の運用段階では人間の承認ステップを残しておく設計が、リスクを大幅に抑えます。「エージェントを信頼するかどうか」は実績で積み上げていくものです。

3. APIコストを事前に試算する

LLMのAPI利用料は従量課金です。1回の問い合わせに対してエージェントが複数のツールを呼び出したり、複数回のLLM呼び出しを行うと、1ユーザーアクションあたりのトークン消費が対話型AIより大きくなります。マルチエージェント構成ではさらに消費が増えます。

コスト感覚を掴む出発点として、Difyの無料Sandboxプランの上限(200メッセージクレジット)を例に取り上げます。社内の問い合わせ対応用エージェントを10名のチームで使い始めると、1人あたり1日3〜4件の問い合わせで月600件前後のメッセージが発生し、この時点でSandboxプランは超過します。有料プランへの移行が必要になるタイミングです。

OpenAI APIを直接使う場合は、GPT-4oの料金体系(入力・出力トークンごとの従量課金)に自社の想定利用量を当てはめて月額コストを試算しておきましょう。

コスト管理として実践しやすい手段が3つあります。

  • APIダッシュボードで月額の予算上限を設定し、超過時にアラートを受け取れるようにする
  • どのフローでトークンが多く消費されているかを定期的にモニタリングし、無駄な呼び出しを削減する
  • 複雑な推論が必要な処理には高性能モデルを使い、単純な分類やルーティングには軽量モデルを割り当ててコストを抑える

PoC段階でコストが想定を大きく上回る場合、業務設計を見直す必要があります。「AIエージェントで自動化したほうが人件費より安い」という前提は、API費用を含めたトータルコストで検証してください。

AIエージェントの作り方まとめ

AIエージェントの作り方は、開発方法の選択→5ステップの実行→運用設計という3つのフェーズで構成されます。ノーコード・ローコード・フルコードのどれを選ぶかは、スキルと要件で決まります。ステップは業務定義から始まり、ナレッジ整備・ワークフロー設計・テスト・改善サイクルへと続きます。

運用では、スモールスタート・Human-in-the-loop・APIコスト管理の3つの鉄則が、プロジェクトを継続させる基盤になります。

今日から取れる最初のアクションは2つです。1つは、Difyの無料プランでアカウントを作成し、自分が担当する業務の中から「繰り返し発生する問い合わせ対応」を1つ選んでPoCを開始することです。もう1つは、そのエージェントに読み込ませるナレッジの棚卸しをすることです。

社内のどこにどんな情報があるかを整理するだけでも、エージェント開発の解像度が上がります。

なお、ナレッジの一元化という課題には、私たちが運営するNotePMが役立ちます。AIエージェントに読み込ませる素材となるマニュアルやFAQを一箇所に集約し、Word・Excel・PDFの中身まで全文検索できる環境を整えられます。AIチャットボット機能を使えば、社内ナレッジを参照した自動回答の仕組みもすぐに試せます。

30日間の無料トライアルで、実際の運用感を確かめてみてください。

AIエージェントは一度完成させれば終わりではなく、使い続ける中で育てていくものです。最初は小さく動かし、フィードバックを積み上げながら対応範囲を広げていく。この反復が、エージェントを実際の業務改善につなげる確かな道筋です。